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旅路94

 フォルトゥナが手にしたその石は、見た目だけで言えば人の形をした石だろうか。奇妙な形ではあるが、他の石も同様に独特の形をしているので特段目を引くほどではない。大きさは親指よりもやや大きいので、そこは他より少し大きいが。

 ヒヅキがその石に意識を集中させてみると、本当に微かだがそこから魔力を感じる。その魔力は、まるで鼓動のように僅かに揺れているような気がした。

『これは……何だ?』

 その石に視線を向けながら、ヒヅキはフォルトゥナに問い掛ける。その石からは鼓動のような気配を感じたので、確かに生き物のようと言われれば、そう感じるだろう。

『不明ですが、入れ物かもしれません』

『入れ物とは?』

 フォルトゥナの言葉に首を捻ったヒヅキは、フォルトゥナの方へと顔を向けてどういう事かと問い掛ける。

『…………中身までは分かりませんが、この僅かに感じる気配を発している何かを封じているのではないかと』

『ふうん? その封印は解けないの?』

 調べるように目を細めながら答えたフォルトゥナの言葉に、ヒヅキは特に深く考えずにそう問い掛ける。何となくではあるが、封印されているかもしれないという中身からは、嫌な感じはしなかったからだろう。

 ヒヅキの問いに、フォルトゥナは石を矯めつ眇めつ調べていくも、よく分からなかったのか首を横に振る。

『この封印に解き目のような場所はありませんね。かなり強固に閉じ込めているようです。また、この石自体が結界を偽装しているだけのようで、簡単には壊せないでしょう』

『なるほど。それは厄介だね』

 封印の中身からは嫌な感じはしないが、それでもそれほどまでに厳重に封印されているモノであるので、もしかしたらとんでもない代物という可能性もある。それこそ、気配を偽装するくらいはお手の物という可能性もあった。

(封印自体は、光の剣か預かっている長剣でなんとかなりそうではあるが……)

 結界など余程のものでない限りヒヅキの前では無意味だろう。しかし、それを軽々しく行使するというのは躊躇われた。中に何が入っているか分からないというのは怖いものだ。

 うーんと考えるヒヅキ。何となく問題ないような気はするのだが、それでもやはり考えてしまう。

 とりあえず、ヒヅキも1度その石を調べてみようと思い、フォルトゥナからその石を受け取る。すると。

「ん!?」

 フォルトゥナから石を受け取ると、直ぐにその石が熱を持つ。それもヒヅキが思わず床に落としてしまうほどに高温であった。

『如何されましたか!?』

 受け取った石を床に放り棄てるように落としたヒヅキに、フォルトゥナが焦ったように声を掛ける。

『ああいや、大丈夫だよ』

 フォルトゥナにそう返しつつ、ヒヅキは自身の手のひらに視線を向ける。かなりの高温だったと思ったのだが、やけどのような痕跡は何も無い。まるでそれ自体が気のせいだったかのように。

『フォルトゥナはその石を持っている時にどうもなかった?』

 床に転がっている石に目を向けながら、ヒヅキが問い掛ける。しかし、フォルトゥナはどういう意味かと首を傾げた。

『どう、とは?』

 その様子に、フォルトゥナはどうもなかったのだろうと思うも、一応ヒヅキは先程感じた事を伝えておく事にした。もしかしたらただの錯覚だったのかもしれないと思って。

『さっき石を受け取った時に石が熱を持った気がしてね』

『熱ですか? いえ、私の時はそういったものは感じませんでしたが』

『そっか』

 では、勘違いだったのだろうか。そう思い、ヒヅキは放った石の近くに移動して傍にしゃがみ込む。

 それでも熱かったという感覚が残っているからか、ヒヅキは恐る恐るといった感じでその石を指で突いてみる。

(熱くはない?)

 指で突いた感じでそう判断したヒヅキは、それでも警戒してか、親指と人差し指で石を摘まんで持ち上げてみる。

「………………」

 持ち上げた感じ、また熱を持つという事はない。やはりあれは気のせいだったのだろうか。そう思いながら、再度その石を手のひらにそっと置く。

「………………」

 それからそのまま少し様子をみてみたが、また石が熱を持つなどという事は起きなさそうだった。

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