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旅路93

 足元には石の床。魔力の気配がする場所とその周囲を注意深く確認してみるも、おかしなところは見当たらない。先程まで掃除道具が山となっていた場所なだけに、汚れも目立つので見極めるのが難しいというのもあるにはあるが。

 フォルトゥナも近くまでやって来ると、しばらく床を眺めた後に、空間収納から短剣を取り出す。それは見た目やや豪華な短剣だろうか。柄の部分が鈍い銀色だが、柄元と柄尻には艶を消した金が使用されている。

 刃渡りは若干短めで、今まで使用していなかったのではないかと思うほどに奇麗なまま。刃は少し厚く、ちょっと地味かもしれないが、儀礼用の短剣だと言われれば納得出来る代物だろう。

 それはヒヅキが今まで見た事の無い短剣だったので、おそらく別れていた間に手に入れた物なのだろう。

 フォルトゥナはその短剣を床の一部に当てると、ぐりぐりと抉るように動かしながら突き入れていく。

 短剣が中に入っていくと共に、床に線が現れる。どうやらフォルトゥナが短剣を突き入れた場所は取り外せるようだ。

 ある程度まで短剣が入ると、フォルトゥナはそれをてこにして床石を持ち上げようとするが、最初に僅かに動いただけでビクともしない。だが、そのおかげで動く範囲は分かった。

 フォルトゥナは短剣を引き抜いて空間収納に仕舞うと、動いた部分に向けて消滅魔法を行使する。

 消滅魔法により消滅した床石の下には、小さな地下収納が在った。その中には、様々な形をした石が大量に入っていた。

 ヒヅキはそのひとつを手に取って目の前に持ってくると、様々な角度から観察していく。

『これは何の石だ?』

 少し変わった形をしているが、ヒヅキにはそれがただの石にしか見えなかったので、同じように中身を調べているフォルトゥナに問い掛けてみた。

『ただの石ですね。形が独特なので、誰かがそういう石を集めて隠していたのかもしれません』

 そう答えながらも、フォルトゥナは地下収納の中に手を入れ、無造作に石を幾つか取り出しては横の床に置くという作業を繰り返している。

『中に何か在るの?』

 その様子がまるで何かを掘りだしているように見えたヒヅキは、視線を手元の石から地下収納の方に移す。

『妙な気配の元がこの中から感じるのです』

『ああ、そういえばそれを探していたんだったな』

 ただの石の山に拍子抜けしてしまい、フォルトゥナが気になる反応とやらを察知して探し始めた事をすっかり忘れてしまっていたヒヅキは、フォルトゥナが掘り出している地下収納の方に意識を集中させる。

『……確かに何かあるね。かなり微弱だけれども』

 最初は、隠されていたから弱い反応しか感じられなかったのだろうと思ったものだが、こうして地下収納まで晒してみても、感じる気配は変わらず弱弱しいものであった。

『はい。弱弱しい気配ですが、生き物のそれに似ている気がします』

『生き物? こんな場所で?』

 地下収納には変わった形の石が在るだけだし、深さは不明だが、広さも両足を揃えれば入るかどうか程度しかない。それに元々上には石のふたが在り、更には掃除道具の山までがその上に載っていた。そんな状況で生きていられるとも思えない。ここが放棄されてそれなりに時間も経っているはずなので、尚更。

『生き物に近いですが、生きている訳ではないのだと存じます』

『?』

 フォルトゥナの言葉に、ヒヅキは首を捻る。しかしまぁ、その辺りは発掘した時に分かる事だろう。そう考え、ヒヅキは狭い地下収納なので邪魔にならないようにと、フォルトゥナの発掘作業を静かに見守る事にする。

 地下収納は小さいとはいえ、石の大きさは指の先程度しかないので、敷き詰められるほどという訳ではないが結構な数がある。それを取り出すだけでも結構時間が掛かった。

 そして遂にフォルトゥナが取り出したのは、他の石と大して変わらない奇妙な形の石であった。

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