旅路90
食料の補充が終わり、残った保存食は折角なので少し食べる事にする。
そのまま保存食を幾つか手に持つと、それを持って城内の散策に戻った。食べ歩きしながらの城内散策というのも贅沢なものである。
通用口が在った辺りは一部の使用人の居住空間でもあったのか、散策をしていると、個人もしくは複数人用だと思われる小部屋が幾つも在った。鍵が掛かっていたので、面倒なので全ては確認出来なかったが。
それからも城内を歩き回ってみるも、1階は使用人や警部兵の為の空間といった感じで、あまり面白い物も無い。しかし、地下へと下りる階段を何ヵ所か発見した。
1階の探索がてら、そのまま地下も調べてみる。
そのほとんどは地下牢であったが、中には何処に繋がっているか分からない扉や、宝物庫らしき場所も混ざっていた。厳重に護られていたので期待したものだが、入ってみれば中には何も入っていない。流石に宝物なんかは持っていったようだ。
それを残念に思いつつも、散策を続ける。途中で隠し部屋も見つけたが、どうもただの覗き部屋のようで、使用人の勤務態度とか噂話の収集にでも使ったのだろうか? ぐらいしか思い当たらないような場所であった。
1階の散策を終えた後は2階に上がる。
大きな階段は色鮮やかな石で出来ており、取り付けられている手すりは金で出来た豪奢な物。それを取り外して売るだけでかなりの額になるだろう。
2階もまたもの凄く広い。2階は部屋数の多かった1階と違って、1部屋1部屋が大勢が踊れるほどに広く、また家具なども華美な物が多い。
(対外向けの階なのか? それにしても、家財道具が結構残っているな)
その華美さに、ヒヅキは外からの客人相手に財力などを見せつけるのが目的なのだろうと考える。だがそれ以上に、かなりの数の家財道具が残っているのに驚いた。それだけ大量に高価な物を持っているという事なのだろう。それか、見るからに高価そうなそれらは置いていっても惜しくもないほどという事か。
流石は王族だと思いながらも、ヒヅキは金目の物には興味が無いので、魔石や魔法道具などの使えそうな物はないかと部屋の中を漁っていく。
(服が多いな)
家具以外だと、圧倒的に服が多かった。それもキラキラでピカピカとした輝く服ばかり。
使っている生地の質が良いのは分かるし、宝石が縫い込まれているのも理解しているが、それだけでしかないので、ヒヅキは興味が湧かなかった。
一通り調べると、金目の物が在るだけの階だった。魔法道具といえば、照明の魔法道具ぐらいのもの。一応回収しておいたが、調べるのはひとつあればいいので、魔石だけ幾つか回収しておいた。ただ、質の高い人工物の魔石を見てしまったからかそれと比べてしまい、全体的に質が悪いとしか思わなかった。もっとも、王城に使われているだけに、この辺りでは1級品なのだろうが。
(海を間に挟んでいるとはいえ、向こうの港には高品質な人口の魔石が大量に在ったというのに、こちらでは使われていない。という事は、あれは外には出していないのだろうか?)
どうなんだろうかと思うも、海を渡ってからここまで見ていないのだからそうなのだろう。という事は、人口の魔石や蓄魔石を生成する技術は、向こう側にしかないという可能性が高かった。
(材料が揃えば挑戦してみるのもいいのだがな)
女性から人口的に魔石と蓄魔石を生成する方法を聞いているヒヅキは、相変わらず豪奢な階段を使用して3階に上がりながら、ふとそんな事を考えていた。
3階は王族の居住空間なのだろうか。部屋数はそれほど多くはないが、1部屋の広さが2階に在った部屋の倍以上で、部屋の中に別の扉が設置されている。
机や椅子、寝台などもあるが、全体的に物が少ない。それでも調べてみると、設置されていた魔法道具から魔石を抜いていく。魔石はあっても困らないうえに、3階の魔石は2階の魔石よりも質が良いようなので、、積極的に魔石が込められている魔法道具からは魔石を抜いていった。




