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旅路85

 そうして一通り話を終えると、休憩を終える。その前に女性に町中を見ていくかと尋ねられたのだが、ヒヅキはそれを断った。めぼしい物はもう何も残ってはいないだろうから。

 休憩を終えると、入ってきた方とは反対側から町を抜ける。こちら側は破壊されていなかったが、内鍵を外して普通に外に出た。

 町の外に出る。海とは反対側は、小さな森が点々と在る平地だった。

 町から伸びている街道は変わらずしっかりとしているが踏み固められたもので、道幅も広い。だが、その街道を使用する者はヒヅキ達以外には居ない。

 真っ直ぐ伸びている街道を進みながら、ヒヅキは周囲に視線を向ける。神殿が在るのは街道からは外れた場所だろうが、道中に何があるかは分からない。

 魔法の練習がてら、ヒヅキは普段よりも広い範囲の索敵を心がける。今のところ、それに何かが引っかかるという事はない。警戒しているのはヒヅキだけではないので、敵性反応が何も無いのは確実だろう。

 街道の景色というのはどこも同じなのか、似たような光景ばかりが続く。途中で休憩場所のような広場があるが、ヒヅキ達には関係ない。

(このまま街道を進むのなら、次の目的地も町なのかな?)

 街道を逸れる事なく進む女性に、ヒヅキはそう考える。探している神への扉はそこら中に偽物が仕掛けられているらしいので、何処に在っても不思議ではない。今までも村や町の中に在った事もあった。

(それにしても、何もいないな)

 敵に限らず、人や動物などの生き物も感知に引っ掛からない。人は既に神殿に避難しているとして、動物はどうしているのだろうかと疑問に思う。もしかしたら、動物も一緒に神殿に避難しているのだろうかなどと思い、その考えに肩を竦める。

 何にせよ、静かな道中だった。せめて英雄達が何か話してくれればいいのだが、休憩中以外は基本的に無言。たまに喋るクロスでも、そこまで頻繫に話しかけてくる訳ではなかった。

 それはそれで魔法に集中出来るのだが、移動音が微かに響くだけの世界というのも寂しいものである。

(そろそろ何か食料を補給したいところだが……)

 保存食の備蓄はまだ在るとはいえ、魔族の村で補充した時から比べればかなり減っている。旅がいつまで続くか分からないので、あまり減りすぎてもいけない。

 街道の途中に村が在ったので立ち寄ってみたが、色々と奪われた後のようで成果は何も無かった。争った形跡はなかったので、住んでいた者達はその前に避難していたようだが。

 それからも進みながら、街道近くに村を見つけては女性に頼んで立ち寄ってみたが、何処も似たようなものだ。あの町でスキアに全滅させられた賊達がこの辺りを荒らしまわったのかもしれない。

 迷惑なものだと思うも、仮に無事でも食べられる食料が残っているとは限らないので、そもそもあまり期待はしていないのだが。何だったら近くに在る森にでも入って木の実でも探した方が楽だったろう。

 そんな事を考えている内に、次の場所に到着する。ヒヅキ達が到着したのは、巨大な防壁に護られた場所だった。

「ここは?」

 威圧感を感じるほどしっかりとした造りの巨大な門を見上げながら、門前で立ち止まった女性にヒヅキは問い掛ける。

「この国の首都ですね。住民はみんな避難した後のようで、中は無人ではありますが」

「なるほど」

 見たところ壊された形跡はない。どうにかして門を壊そうとした跡はあるが、余程頑丈らしく、門の破壊までには至らなかったようだ。よって、中には侵入できなかったという事らしい。

(壁を登ってもいけそうだが)

 ヒヅキはそう思うも、いくら無人で首都側からの抵抗がないとはいえ、巨大な防壁を登るとなると、普通の人ではそれはそれで結構大変なのであった。

 もっとも、こちら方面が無事というだけで、別の方面の門が破壊されているという可能性もあるのだが。

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