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旅路84

 思わぬところで疑問の答えと思しきものに辿り着いたなと思うと同時に、もしかしたら先に避難していた村や町の人々の避難先はその神殿だったのではないだろうかと、ふと思い当たる。

 こちらもまた思わぬところで答えを知ったなと思うも、別に興味があった訳ではないので、直ぐに頭の片隅に追いやる。

「それで、その神殿に居るはずのスキアが何故こんな場所に? ここは神殿ではないのですよね?」

 女性に尋ねながら、ヒヅキは周囲を見回す。周囲には背の高い建物が広場を囲む壁のように建っているが、それだけだ。何か特別な力が漂っているという感じはしない。

「ここは普通の町ですね。そして、神殿に居るはずのスキアが何故ここに現れたのかは分かりません。ですがおそらく、今回は神殿への避難者の数が少ないので探しに来たのではないかと」

「わざわざ探しに出てくるのですか?」

「これは今までになかった事ですが、それでもあのスキアがわざわざ外に出て捕食するという状況を考えれば、後は潜んでいた神殿が無くなったとか、正体がバレて神殿に居られなくなったとかですかね」

 思案するように顎に手を当てながら、女性は避難者が少ないとは別の可能性を挙げていく。

「ここの近くの神殿は何処に在るのですか?」

「ここからですと、あちら側へと普通に歩いて半日といったところですね。私達でしたらその半分もあれば着くでしょう」

 町に入った側とは反対側を指差し、女性はそう説明してくれる。

 そちらに顔を向けたヒヅキだが、現在地からでは分からない。

「もしも神殿が残っていて追われたのではないのなら、スキアは今はそこに居るのですか?」

「それは分かりません。可能性としては最も高いとは思いますが」

「そうですか」

「神殿に行きたいのですか? 今のところその予定は無いのですが」

 女性の問いにヒヅキは少し考えるも、気にはなったがわざわざ見に行くほどではないなと判断する。

「いえ、ただの好奇心ですが、そこまででは」

「そうでしたか」

「しかし、それにしてはこの町は奇麗ですね」

「?」

「ここでスキアが暴れたとは思えないな。と思いまして」

 賊が荒らした痕跡はそこら中に在るというのに、戦闘の跡は無い。ヒヅキが過去視で視た通りであれば、何らかの方法で最初に全員を眠らせたか、気を失しなわせたか、殺したかしている。それであれば、戦闘跡が無いのにも納得が出来るのだが……。

「ああ。それでしたら、先に町ごと魔法で覆ってここに居た者達の意識を奪ったようですね」

「スキアがそれほどの魔法を?」

 スキアというのはあまり魔法を使わない。必要ないほどに強いというのもあるが、基本的には近接戦闘をしてくる。たまに遠距離で攻撃してくる時もあるが、その場合も身体の一部を伸ばすなりして攻撃してくる場合が多かった。

 なのでスキアが魔法を、それも町ごとという広範囲とはいえ、攻撃系や身体能力系ではなく、意識を奪うだけの魔法を行使したというのは初めて聞く話であった。

「ええ。ですから特殊な個体なのですよ、あのスキアは。戦闘よりもそういうのが得意ですからね」

「なるほど」

 ヒヅキは女性の答えに頷く。であれば、過去視の内容も理解出来た。そして、厄介でもある。

「ヒヅキも気をつけた方がいいですよ。まぁ、大丈夫だとは思いますが」

「そうですね。今は神殿から外に出ているという話でしたし」

「ええ」

 女性の忠告を素直に受け取ると、ヒヅキはもう少し魔法の練習をした方がいいなと思ったのだった。

 睡眠やら麻痺やらの魔法は、魔力の扱いが巧ければ効き難く、効いても直ぐに正常な状態に戻せるようになるとフォルトゥナが話していたので、対策としては必要だろう。

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