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旅路80

 そうして地下の換気を終えた後、ヒヅキ達は地下へと下りる。

 ヒヅキは念の為に風の結界を弱く展開しながら光球で周囲を照らし、長いというほどではない階段を下りると廊下に出る。

 思ったよりも長い廊下と、左右に幾つもの扉が並ぶ。扉はほとんど開いているようで、廊下まで物が散乱していた。

 少し歩くと、足下に白骨化した死体が転がっていた。しかし、まだ完全に骨だけにはなっていないようで、腐った肉が骨にくっ付いている。

 それを避けて進み部屋の中を覗いてみるも、色々なモノが散乱しているだけだった。その中には、人骨だろう骨も混ざっていた。

「魔石や蓄魔石が何処に在るのか分かりますか?」

 そんな状況でもヒヅキは全く気にせず、目的の物について女性に尋ねる。

「隣の部屋と、他にも3部屋に点在してますね」

「そうですか。ここには何も無いのですか?」

「無いですね。ここは使用人の部屋だったのでしょう」

 女性の返答を聞いた後、では用は無いと踵を返し、魔石や蓄魔石が在るという隣の部屋に移動する。

 隣の部屋も似たような惨状だったが、女性は部屋の中に入ると、散乱している家財道具をかき分けて、中から魔石か蓄魔石を掘り出していく。

 その間、ヒヅキは部屋の中を調べてみる。

 部屋の中は、派手に暴れたのか大きな嵐の後のようなありさまで、ここに在った家財道具はどれも破損している。

 割れた食器に、ズタズタに割かれた服。バラバラの本棚や椅子に机。その中に人骨が混じり、腐った食べ物が少量見受けられた。

 どれほどの人数が居たのかヒヅキは知らないが、空気の循環もなく長いこと閉じ込められていたようなので、死因は餓死というよりも窒息死なのかもしれない。

 そうして調べている間に魔石と蓄魔石の回収は済んだようで、次の部屋に移動する。長い廊下にも、人骨など色々なモノが散乱していた。

(入る前に風の結界を展開していてよかったな)

 もしも風の結界を展開していなかったら異臭が凄かっただろうなと思う光景ばかりの地下に、ヒヅキは眉根を寄せながらも安堵する。事前にフォルトゥナが換気したといっても、気持ちの問題まではどうにもならないだろう。

 他の部屋も何処も嵐の後のような惨状で、どれだけ暴れたのかと思わずにはいられない。

 そんな中でも女性は淡々と目的のものを回収していく。

 地下は結構広いようで、部屋数が多い。見ていくだけでも時間が掛かるほどだが、その道中、ヒヅキはふと思い出して女性に尋ねた。

「そういえば、元々地上の建物に設置してあった爆発する魔法道具は何処に在るのでしょうか?」

 ヒヅキが問うと、女性は今し方入ったばかりの部屋の奥を指差した。

「それでしたら、丁度この部屋に在りますよ」

 そう言うと、女性は奥の方へと進んでいく。

 女性が部屋の奥で散乱している物をかき分けて取り出したのは、球状の何かだった。

「それは?」

 球状の何かを手に戻ってきた女性に、ヒヅキはそれを指差し尋ねる。

「これが爆発する魔法道具ですよ。この状態では爆発しませんが」

 そう言って差し出された球体を、ヒヅキは受け取り観察する。

 その球体の側面には絵が描かれていた。色は塗られていないが、艶やかに光を反射させる球体の表面と相まって、独特な雰囲気を醸し出している。

 重そうな見た目に反して重さはそれほどではなく、子どもでも持てそうなぐらい。

「何故この状態では爆発しないのですか?」

「目的が目的なだけに、安全装置が働いているようですね。それを起動させたければ、所定の位置に置いた後、然るべき手順を踏んで起動させなければならないようですよ」

「なるほど」

「もしもその安全装置を外せたのならば、ここから脱出する事も出来たかもしれませんね。まぁ、甚大な被害を及ぼしますが」

 広いといっても地下である。元々地上の大きな家を爆破する為に用意された魔法道具なだけに、その威力は相当なものだろう。であれば、入り口で起動したとしても奥の方まで威力は届くかもしれない。それでも、現状のように全滅するぐらいならば、そちらの方が分の良い賭けだった事だろう。

「と言いましても、安全装置は簡単に外せないから安全装置たらしめているのですがね。それで、それはどうするおつもりで?」

 軽く肩を竦めた女性は、ヒヅキの持つ球体を指差して、そう問い掛ける。

 それに少し思案したヒヅキは、不要なのでその球体はその場に置いていくことにした。魔法道具を調べるにしても、流石にその内容が物騒過ぎた。

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