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旅路79

 光球を伴いヒヅキは一通り石塔内部を調べるも、反対側の石塔とそう大して違いは無かった。階段の上部まで調べたが、結果は同じ。

 階段を下り、女性に地下について尋ねようと思ったヒヅキだが、女性の姿が消えていた。

「あれ?」

 何処に行ったのだろうかとヒヅキが周囲を見回すと、階段下の空きでしゃがみ込んでいる女性を発見する。何をしているのだろうかと思いながら近づくと、女性は壁や床、階段の裏側へと何度も手で触れていた。おそらくそこに魔法道具が在るのだろう。

『何をしているのかフォルトゥナは分かる?』

『はい。魔法道具の修繕をしながら、確認と調整をしているようです』

『なるほど。なら、もう少し掛かりそう?』

『はい。修復は大分進んでいるようですが、まだ終わらないでしょう』

『そっか。ありがとう』

 ヒヅキはフォルトゥナに礼を言うと、邪魔にならないように女性から少し離れる。

 そのまま見ていてもいいのだが、一応外に通じる扉も調べてみる事にした。

『この扉に罠はある?』

『いえ、鍵が掛かっているだけの普通の扉です』

『なら大丈夫だね。ありがとう』

 ヒヅキが調べてみても普通の扉なので、内鍵を外すと、ゆっくりと扉を開く。

 扉を開くと、太陽光が入ってきて一瞬視界が白く染まる。光球を出していたとはいえ、そこまで強い光ではなかったので目に染みた。

 視界に色が戻ると、周囲に視線を向ける。場所は英雄達が休憩している正面の裏側。だからと言って建物の影という訳ではないようで、見上げると頭上に太陽があった。位置的に、まだ昼を過ぎて幾ばくか経ったぐらいだろうか。

 建物の裏側には何も無かった。いや、よく見れば花壇らしきものがあるのだが、長いこと手入れをされていなかったようで、花壇内は草だらけで、草に埋もれるようにして花が少し確認出来る。石で囲っていなければ、そこが花壇だとは気づかなかったほどの荒れ具合。

 花壇だけではなく、裏庭中が草に覆われている。最早庭というよりは藪といった様相である。

 何か気になるものでもあるかと思ったが、見渡しても草木ぐらいしか見当たらないので、石塔の中に戻る。

 扉に再び鍵を掛けると、女性の方へと移動して、大人しく作業を見守る事にした。

 女性は床に片手を置いたまま、壁と階段裏にもう片方の手を行ったり来たりさせている。フォルトゥナの話や女性の話を思い出すに、床の方に魔法道具が設置されているのだろう。何処にかはヒヅキには分からないが。

 感知魔法を使って地下空間を探してみるが、やはり地面の下というのは分かりにくい。それでも下へと続く道っぽいものはあるようなので、その先が地下へと続いているのだろう。

 判明した道の場所は女性が片手を置いている床付近からなので、やはりそこが地下への扉なのだろう。

 感知魔法を使ったからといって他に何か分かる訳でもなく、ヒヅキは女性の作業が終わるのをじっと待つ。

 それから程なくして、女性が立ちあがった。

「誤作動を起こしたまま長期間放置されていたので、結構壊れていたようですね。それでも修復が終わりましたので、地下への道を開いてみますか?」

 振り返った女性の問いに、ヒヅキは頷く。

 それを確認した女性は少し移動した後、床に手を置いて魔法道具を起動させた。

 ギギギという石と石が擦れるにしては少し甲高い音を響かせ床の一部が沈んだかと思うと、かなりの低速ながらその沈んだ床の一部が横にずれていく。

 横の床の中に消えていった床の下には、暗闇へと伸びる階段が姿を現した。

 それが姿を見せると同時に、地下から吐き気を催す強烈な異臭が昇ってくる。

 その異臭を感じて、ヒヅキは口元を手で覆って数歩下がる。それから少し考えて、近くの扉や窓を開けて換気をしていく。

 ヒヅキがそうしている間に、フォルトゥナは風を操作して地下の空気を外に出しては地上の空気を中へと送っていく。地下から出した異臭は、ちゃんとヒヅキが開けた扉の外まで運んでいた。

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