図書館2
エルフ・獣人・竜人・龍人・ドワーフ・鬼・魔族・ドラゴン……等々、保管されている様々な種族の資料を読み漁る。
人口・財源・特産・行政・種族特性・統治者の系譜・人族との関係・他種族との関係……等々と、思っていた以上に様々な種類の資料を閲覧する事が出来たが、ものによっては簡略化されていたり、情報自体が古かったり、経過が省かれ結果や結論だけが記載されていたり、もしくはその逆に結果や結論が記されていなかったりしたが、それでもヒヅキは思った以上に求めていなかった各種族の内情を知る事が出来た。
しかし、肝心の歴史やお伽噺、伝承などはそこまで多くはなく、あっても人関連か人にとって有益な情報、もしくはそこまで古くない話しか存在しなかった。
(いや、まだ全部に目を通した訳じゃない)
ヒヅキはまだまだ文字通り山のようにある未読の資料の存在を意識して、気落ちしそうな自分を鼓舞する。
しかし、いくらヒヅキの読む速度が異様に早いとはいえ、流石に1日やそこらで読み終えるような量ではなく、読み終えた資料の山でヒヅキが埋もれて隠れてしまうほどに読み進めたが、結局お目当てのものはほとんど見つけられずに、その日は陽が暮れる前にシロッカス邸に戻ったのだった。
翌日もヒヅキは朝早くから図書館に来ていた。
手当たり次第に資料を読み漁ると、日暮れ直前に帰る。そんな生活を繰り返して1週間が経過した頃には、受付の女性ともすっかり顔見知りになっていた。
「本日も図書館にようこそいらっしゃいました。どうぞごゆっくりお探しください」
などと入り口で声を掛けられるぐらいにはこちらを認識されていた。
それから更に1週間が経っても、依然としてお目当ての資料は見当たらず、既に全体の半分弱は読み終えていた。雨の日も風の強い日も通っているだけあり、結構な勢いで消化していた。
毎日朝早くに外に出ては夜に帰って来るために、アイリス達に少し奇異な目を向けられている気がするが、それも致し方の無い事だろう。
シロッカスの話によると、仕事はまだ他の武器輸送が済んでいないために、武器自体は既に用意しているが、肝心の護衛対象である運び手の人足不足で後一月程は掛かりそうという話だった。きっと護衛に出る頃にはそれなりに寒くなっている事だろう。
更に2週間とちょっとが経過し、気がつけば1ヶ月も図書館通いをしていた。資料も後少しで読破出来るだろう量にまで減っている。
今までで幾つか興味深い資料が見つかってはいるが、どれもスキアの正体にまでは辿り着けていない。それでも、面白そうな事が書かれている資料があった。それは、世界の終焉の示唆について書かれたエルフに伝わる逸話を集めた資料だった。