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旅路73

 家財道具が少ないので1階の探索は直ぐに終わったとはいえ、それでも広い建物だ、見て回るだけでもそれなりの時間を要している。

 なので、これからの2階の探索もちゃっちゃと終わらせてしまいたいところ。

 2階にいる女性とクロスは別行動をしているようで、左右に分かれて気配を感じている。とりあえず近い方からと思い、ヒヅキはクロスの気配がする方向へと廊下を進む事にした。

 2階の廊下にはあまり物が置かれていた様子が無かった。1階の廊下には壷やら絵画やらが置かれていたらしい跡が随所に確認出来たのだが。

 足下には1階同様に落ち着いた色合いの絨毯が敷かれている。毛足が短いが柔らかい。長いこと放置されていただろうに、少し埃が積っている程度で痛んでいる場所はみられない。

 廊下に並ぶ扉をひとつひとつ開けて確かめてみると、こちらは客室なのか、1階よりは1部屋1部屋が広いがそれだけ。

 そんな部屋を見ていき、廊下の角を曲がる。建物の造りは、基本的に部屋が中央に集まっていて、外側を廊下が通っている感じらしい。1階はもう少し複雑ではあったが、基本は変わらない。

 そうして部屋を確認しながら移動し、クロスの居る部屋に入る。そこは他の部屋の3室分ぐらい広かったが、家財道具は運び出した後なので何も無かった。

 そこでクロスは、奥の方に在った何も入っていない大きな本棚に目を向けていた。その本棚は備え付けなのだろうか、造りはしっかりしているのに持ち出されなかったらしい。それか単純に嵩張るからか。

 ヒヅキが近づくと、クロスはゆっくりと振り返って礼をする。

「何か私に御用でしょうか? ヒヅキ様」

 クロスは見た目は少年なのだが、その落ち着いた物腰と口調に、やはり見た目通りの年齢ではないのだなと改めて思う。

「いえ、特に用は無いのですが、ここで何を?」

 元々大きな家と石塔に興味があっただけなので、クロスに会いに来たのはあくまでもついでだ。用事がある訳ではない。それでもこうして挨拶を交わしたので、折角だからと、ヒヅキはクロスが何をしていたのかを問い掛けてみた。これが女性であれば扉探しという可能性もあるが、クロスだとよく分からない。こんな家に興味があるとは思えないのだから。

「用という用も無いのですが、どうもそこの本棚が隠し扉の入り口を開ける鍵になっているようなので、どうやればいいのか観察していたところです」

「そうなのですか。鍵という事は、入り口は別の場所に?」

「ええ。入り口は石塔の方に在るみたいですね」

「石塔ですか」

 大きな家を挟むようにして建つ2本の石塔。そこに入り口があるのならば、2階の1室からだと結構遠い。

「何の為に離れたここに鍵を設置したのかまでは分かりませんが、ここに魔法道具があるようで」

「魔法道具ですか?」

 ヒヅキは本棚の方に視線を向けるも、特に変わった感じはしない。

「はい。石塔からこの本棚へと魔力回路が通っているのが視えまして」

「魔力回路が?」

 クロスの言葉に首を傾げたヒヅキは、足下や壁、天井に目を向ける。しかし、ヒヅキでは魔力回路を視る事は出来なかった。

『フォルトゥナは分かる?』

 魔力を視る事が出来るフォルトゥナに、ヒヅキは周囲に目を向けながら問い掛けてみる。

『かなり薄っすらとですが、あの本棚の後ろの壁に微かにそれらしいのが』

『なるほど。ありがとう』

 魔力回路と言っても、長く使われていなければほとんど魔力を持たないのかもしれない。そうなると、魔力が視えても分からないのだろう。それでも、一応場所が判っただけ十分な成果だが。

 改めて本棚の後ろの壁を凝視してみるが、やはりヒヅキでは分からない。

 その間にクロスは本棚の前に戻ったようで、本棚の周囲を観察するように動いている。

 それを見てヒヅキも興味が湧いたので、本棚の方に近づいてみた。

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