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旅路71

 全員が揃ったところで移動を開始する。

 町中は静かではあるが、奇麗であった。それでも生気と言えばいいのか活気とでも言えばいいのか、人の気配が全く感じられないので、まるで廃屋の中を歩いているような不気味さに包まれている。

 奇麗な建物が並んでいるので、見た限りこちらは荒らされているという事はないようだ。

(ここの建物は随分と立派だな)

 確認出来るのは通りに面している建物だけではあるが、どれも今まで見てきた町の家よりも大きく、また高かった。1階1階の高さが高いようで、建物自体は2階建てだというのに、ヒヅキの感覚ではその建物の高さは3階建てのように思えた。

 それに比例するかのように横幅もあるので、おそらく奥行きも相当なものだろう。そう思い、移動しながら横目で確認してみると、子どもが全力で遊べそうなぐらいに広かった。

 その広さは家というより店なので、もしかしたらここは何かの店なのだろうかと思うも、路地から見える奥の方の家も似たような大きさだったので、ここには大柄な種族が暮らしていたのかもしれない。ヒヅキはそう思う事にした。

 それだけ建物が大きいと、その分数は少なくなる。外から見て、町にしては大きいと思ったが、そういう事だったのだろう。

 視線を少し先の町の中央付近に向けると、防壁よりも高い塔が建っている。それも大きな家を挟むように2本も。

 まるで見張り塔のようだが、見たところ石造りのようだ。高さは5,6階建てぐらいはあるように思えるので、乗ってきた船と同等かそれ以上の高さが在るのだろう。

 それほどの石塔を建てる技術というのも驚きだが、何故そんなものが在るのかと疑問に思った。周辺に魔物でも湧いているのかとも思ったが、そんな感じはしない。

(近くに何かしらの敵が居たのだろうか?)

 全体を見渡すような石塔にヒヅキはそう思ったが、周辺状況についてはヒヅキでは分からない。分かっている事といえば、ここが港町からほど近い場所の町だという事ぐらいだろう。

(……ここは防壁も厚かったし、もしかして海の方から攻めてくる敵でも警戒しているのだろうか? 港町が落ちたら次はここだろうし)

 そう思うが、やはり情報不足なので想像でしかない。そもそも中央にある石塔が見張り台とは限らないだろう。

 おそらく石塔の間にある大きな家は、この町の長の家だと思われる。近づくと、家と石塔の周囲には堀があった。幅は数メートルほどだが、飛び越えるのは難しい距離。そこには水が流れており、堀を経由して町の各所に流れるようになっている。水上都市とまでは言えないが、水には困らなさそうだ。

 家の正面には跳ね橋があり、現在はその橋が下りている。避難する時に降ろしてそのままなのだろう。

 女性はその跳ね橋の手前まで移動すると、一行に休憩を告げる。好きに町を散策しろという事だろうが、女性はここに何か用事でもあるのだろうか。休憩を告げた後、女性ははね橋を渡って大きな家へと向かっていった。

 その背を眺めながら、ヒヅキはどうしようかと考える。女性の後を追って大きな家の中に入ってもいいし、ついでに石塔を調べてもいい。

 それとも、何か面白いモノがないかと町を散策してみようか。ヒヅキはどうしたものかと悩む。

 英雄達の方はその場で休む者がほとんどで、町に散策に出た者は片手で数える程度。クロスは女性に続くように大きな家へと入っていった。当然のように大きな扉を透過して。

「………………」

 ヒヅキとしては大きな家と石塔が気にはなるが、しかし、今行けば女性とクロスが居るので、気が進まないといえば気が進まない。

 町の探索も興味があるも、誰もいないので本当に見て回る事しか出来ない。それはそれでいいのだが、悩みどころであった。

(やはり旅に出たのだから、町を見て回るというのも醍醐味だろう)

 とは思うも、誰もいない場所でとなると、それでいいのかと考えてしまう。

(しかし、だからといって大きな家に入るというのも……)

 そうして少しの間悩んだヒヅキは、どうしても気になるので大きな家の中に入る事にしたのだった。

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