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旅路65

 嵐の海だろうと凪の海だろうと関係なく船は進んでいく。船の主な推進力は魔法道具で生みだされているので、帆船と違って風は関係ない。

 もっとも、嵐の中で吹き荒れる風や荒れ狂う波は影響を受けるも、その辺りは別の魔法道具で補っているようだ。

(これでまだ未完成らしいからな)

 この船の魔法道具を改造したクロスとしては、ここまでしてまだ未完成らしい。というか、ほとんど急場しのぎの応急処置程度の出来だとか。

 聞いた話だと、元々搭載されていた魔法道具を弄っただけらしいから、さもありなんとは思うのだが、ヒヅキの記憶の中に在る船の設計図や搭載されていた魔法道具の性能と比べると、性能があり得ないぐらいに向上している。元々の船だと、嵐の中を突き進むなど不可能だっただろう。

 そんな事を考えていると、ふとクロスと最初に交わした会話を思い出した。あれはクロスが生前どんなことをしたのかという話だったか。

(クロスは空に浮かぶ城を持っていたんだったか。そんな技術がある世界を生きていたのだから、これぐらいは朝飯前というやつなのだろう)

 現在では浮遊城など創作話でなら見掛けるかもしれない程度。空を飛ぶなど一部の種族の特権のようなものだ。そんな世界の船など技術とも呼べないほどに低次元の代物なのだろうと思えた。

 もっとも、そんな低次元の代物を、材料もろくにないその場でここまで改造できるというのも大概だが。

(まぁ、今更理解しようなんて思わないし、快適な船旅が出来ればそれでいいのだけれど)

 とはいえ、興味はある。だが、色々段階を飛ばした過ぎた物を理解出来るとは思えなかった。ヒヅキはそこまで優秀な頭脳を持っていない。フォルトゥナであれば理解しそうではあるが。

 後どれぐらいで目的地に到着するのか。それについてヒヅキは何も聞かされていないので分からない。

 船内ではやる事もないので、フォルトゥナと色々と話をしたり、魔法の練習をしたりして時を過ごす。時折眠るも、あまり必要ないからか睡眠時間は短い。

 そうして好き勝手に過ごしていると、船速が徐々に落ちてくる。そろそろ到着だろうかと思い、ヒヅキは甲板に出た。

 甲板に出ると、すっきりとした青空が広がっていた。周囲の海も穏やかで、進行方向には陸地が見える。

『目的地かな?』

『それは分かりませんが、何処かの島という訳ではないようです』

『ふむ。あの港が目的の港なのであれば、この船はどうするのだろうね。魔石とか蓄魔石を回収しておきたいところだけれども』

『それでしたら、あの女性が行うのでは?』

『ああ……かもしれないね』

 ヒヅキ達が港町で回収していた魔石や蓄魔石は女性に渡しているので、足りない分が必要であれば後は女性が勝手に色々と進めてくれるだろう。渡した分で片道分ぐらいらしいので、倍は用意しなければならない。

 航海で動力として消費したので、この船だけではまだ足りないかもしれないが、それでもかなりの量にはなるだろう。必要なのであれば、それを見逃す手はない。

 そういう訳で、ヒヅキは後は女性に丸投げする事にした。集まらなくともクロスがどうにかするらしいので、片道分集めただけでも感謝して欲しいぐらいなのだから。

 港が段々と大きくなっていく。ヒヅキは身体強化の応用で視力を上げて、甲板から港町を確認する。

 しかし、案の定というか誰の姿もない。軽く見た限りだと少し荒らされているようだが、それでもスキアが襲撃したという訳ではなさそうだった。

 ヒヅキ達は1度荷物を取りに船室に戻った後、身体強化を目に集中しなくとも視認出来るぐらいの距離まで港に近づくと、船内から女性や英雄達が出てくる。

 そこで下船後の話を女性が皆にしたところで、船が港に到着した。そこは遠目に確認した通り、人の気配の全くしない廃れた港町だった。

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