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旅路61

 その後に結界内を注意深く探って何も反応が無い事を確かめたフォルトゥナは、ヒヅキ探しの旅に出た。

(あの時も探れるだけ探りましたが、相手が悪いですからね)

 フォルトゥナは可能な限り手を尽くしてウィンディーネを消滅させたが、それでも完全に消滅させられたとは思っていない。

(もっとも、復活したところであの程度ではもう意味も無さそうですが)

 ヒヅキの周囲の顔ぶれを思い出し、フォルトゥナは軽く首を振る。誰も彼もがかなり強そうな者達ばかりだった。フォルトゥナでも消滅魔法を使用しなければ厳しい戦いになるだろう。

(一部勝てなさそうな相手もいますが)

 中にはフォルトゥナから見て、仮に消滅魔法を使用したとしても勝てそうもないと思わせるという存在も居る。それに加えてあの女性だ。ウィンディーネなど仮に万全でも物の数でもないだろう。

(それに、追っているのはその上のようですし)

 今回の相手は神らしい。その話は聞いているが、そこはフォルトゥナにとってはどうでもいい話だった。フォルトゥナにとってはヒヅキの敵なら自身の敵、ただそれだけでしかない。

 静かな船室に海をかき分け進む音と、動く事で軋む船の音が僅かに響く。

 船室に窓は無いので、今外が明るいのか暗いのかは分からない。天井から吊り下げられている魔法道具の明かりだけが頼りという部屋だが、それに使用されている魔石は小粒だったので、使用してもそう長くは保たないだろう。もっとも、必要ないので使っていないが。

 暗い室内でも、魔法が扱える者ならば大抵の者は周囲に何があるのか理解出来る。これは感知魔法の応用なので、当然練度によってどの程度視えるかは差が出る。範囲を狭めれば、肉眼よりも遥かに色々と視る事が出来た。

 部屋の周囲は静かなものだ。誰かが呼びに来るという事もないし、各々自室に籠っているのか、誰かが部屋の近くを通るという事もない。

 何をするでもないのんびりとした時間をヒヅキと二人きりで過ごすというのも、フォルトゥナにとっては随分と久しぶりな気がした。ヒヅキが寝ているとかはこの際どうでもいい。

 何も無いので何かするという訳でもなく、フォルトゥナはただ静かにヒヅキの隣で時間を過ごす。それでもフォルトゥナにとっては至福の時間であった。

 それからどれぐらいの時間が経過したか。フォルトゥナにとっては一瞬のことであったし、そもそも部屋の中から外の明るさは窺い知れないので、時の感覚はあまり正確ではないだろ。

 そこで扉の外の様子が慌ただしくなってきたのを感じたフォルトゥナは、外の様子を確かめるべく扉を開く。

 そうすると、ちょうど部屋の前を通って甲板の方へ行く者が居た。フォルトゥナはその人物に声を掛けようかと思ったが、余程急いでいたのか直ぐに通り過ぎていった。

「………………」

 少し考え、部屋に遮音効果のある結界を張った後、事態を把握する為にフォルトゥナも甲板に向かう。

 甲板に出ると、船縁の各所に英雄達が集まって待機している。ピリピリとした空気を感じたフォルトゥナは、広域を探知してみる。

 そうすると、離れた場所に何か大きな存在が居るのを感知する。おそらく魔物だろうが、フォルトゥナは海の魔物については多少知識がある程度なので、現時点ではそれが何かまでは分からない。

 それでも、とりあえず自分が何かしなければならないという事態ではないようだ、とは判断した。いくら相手が巨大な魔物だとしても、こちら側の戦力が過剰すぎる。

 そこで興味を失ったフォルトゥナは、警戒だけはしつつも自室に戻った。

 自室では、まだヒヅキが眠っている。遮音効果のある結界を張っていたとはいえ、今でもピリピリとした空気は部屋の中からでも若干は感じ取れるので、その中でも眠っているとなると余程疲れていたのだろう。

 フォルトゥナはこのまま静かに事が済めばいいとは思うが、巨体が動くだけでも波が立つので、残念ながらそう上手くはいかなさそうだった。

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