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旅路57

 何も見えない海に、ヒヅキは諦めて顔を上げる。

 その時にはフォルトゥナはヒヅキの方に顔を戻していた。遠くの海も静かなもの。

 海の先をあちらこちらと眺め、何も確認出来ない海にヒヅキは小さく息を吐き出して船内に戻る。

 その後に続いてフォルトゥナも船内に戻るが、その直前にふと海の方に視線を向けると、遠くの方で大きなヘビの胴体らしきものが海上に小山をふたつ作っていた。

 ヒヅキに声を掛けようとしたフォルトゥナだが、しかしそれは直ぐに見えなくなってしまったので、諦めて船内に入る。

 自室に戻ったヒヅキは、寝台に腰掛けた後に少しして、そのまま後ろに倒れるように横になる。何か見つかるだろうかと期待したのだが、そう上手くはいかないらしい。

「はぁ」

 思わず零れてしまったため息を耳にしながら、ヒヅキはボーっと天井を眺める。天井に何か面白いものがある訳ではないが、何も考えない時間というのも結構貴重だった。

 その隣では、フォルトゥナが何食わぬ顔で腰掛けている。そこに居るのが当然といった感じで堂々としたものだ。

 しばらくの間そうして静かな時間を過ごした後、ヒヅキは魔法の練習を行うことにする。室内なので出来る事は限られているが、魔法の知識があるフォルトゥナが隣に居るので丁度いい。

 そうしてヒヅキは魔法の練習を行っていく。魔法の練習は結構長く続き、切りがいいところで終える。

「ふぁ」

 魔法の練習を終えたところで、ヒヅキは小さく欠伸を漏らす。

「折角だから少し寝るかな」

 硬い寝床ではあるが、それでも旅の空の中ではまともな部類に入る。ヒヅキの旅だと、地面の上に寝るというのが基本なぐらいなのだから。

 ヒヅキはフォルトゥナに何かあったら起こしてくれるように頼む。どうせ何を言っても出ていくつもりはないのだろうから、それならそれで役に立ってもらうだけ。フォルトゥナは睡眠も必要としていないらしい。

 それは羨ましくもあるが、しかし今のヒヅキとしては、それも少し寂しいような気がした。

 たまに短い睡眠を取ってはいたが、それでも疲労は取れていなかったようで、ヒヅキは目を瞑ると直ぐに眠りに落ちていく。

 穏やかな寝息を立てるヒヅキの寝顔を眺めながら、フォルトゥナは安堵するように小さく息を吐き出すと、そこにヒヅキがちゃんと居るというのを確かめるかのように、手を伸ばしてそっと指先で頬に触れた。

 ドワーフの国でヒヅキが何処かへ行った時はどうしようかと思ったものだが、こうして再会出来たのだからそれはよしとしよう。あの時の事を思い出し、フォルトゥナはそう結論付ける。

(それに、これからは何があっても離れなければいいだけなのだから)

 その対策は単純だが、しかしそれで大体は解決する。ヒヅキだけに反応する転移魔法などが存在すれば別だろうが、存在するかどうかも怪しいそんな事まで考えるときりがない。

 なので、最も単純で最も効果的なその方法を選ぶ。少なくとも、目の届かないところにヒヅキが行く事だけは阻止すれば何とかなるだろう。

(そういえば、あれは今頃どうしているのでしょうか……)

 フォルトゥナの言うあれとは、ウィンディーネの事だ。現在の行方は不明だが、フォルトゥナは別れた時の事を思い出す。

(一応始末はしておきましたが、あれはそう簡単に滅せませんからね)

 それはフォルトゥナがヒヅキとドワーフの国で別れた後の話。

 待てど暮らせど戻ってこないヒヅキに不安になり、フォルトゥナはどうにか先に進めないかと色々試したのだが、結局ヒヅキの後を追う事は出来なかった。

 なので、どうにかしてヒヅキの許へ辿り着ける道を探すことにしたのだが、問題はヒヅキが何処に行ったのか。

 何とか捕捉していたヒヅキの気配は、更に奥へと行った事で消えている。そこからフォルトゥナは、ここは抜け道なのだろうと推測し、だからこそ何処に行ったのか分からなくなる。

 とりあえずヒヅキを追う為にも地上に出る事にしたフォルトゥナは、それより前に折角なのだからと邪魔者を消しておく事にした。

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