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旅路53

 視線の先には大きな船。しかし、遠すぎて大きな船だろうぐらいしか分からない。船上に何かあっても詳細は全く分からないだろう。船べりに誰かが立てば、存在ぐらいは確認出来るかもしれないが。

 ヒヅキはどうにかしてもっと船をよく見られないだろうかと考える。女性に訊けば済む話だろうが、遠い場所の様子を確認する手段というのはあっても困らないだろう。

 何かないかと高速で思考を巡らす。以前フォルトゥナにそのような話を聞いたような覚えがあるも、記憶が曖昧なので直ぐには思い出せない。

 そうこうしている内に女性が視線を船から英雄達の方に向ける。

「これからあの船に乗船します。転移で向かいますので、その場を動かないようにお願いします」

 女性の近くで固まって待機していた英雄達にそう告げた後、ヒヅキの方へ視線を向けてから女性は転移魔法を行使した。

 転移魔法により、視界が一瞬で切り替わる。先程までの海上の船を遠目に眺めていた光景から、海に囲まれた船上の光景に。

 ヒヅキも転移魔法には慣れたもので、もう驚くような事はない。フォルトゥナはあまり転移魔法の経験がないはずだが、気にしていないようだ。

 船上には、先程まで港に居た女性と英雄達の他に、何故だかクロスが居た。女性が船を見て呆れたのはそれが原因かもしれない。

「遅かったですね」

 ヒヅキ達が船上に現れると、クロスが女性にそう告げる。

「ここで何を?」

 それには応えず、女性はクロスに問い掛ける。ここにクロスが居るのは女性は知らなかったようだ。

 ヒヅキはそんな二人の会話を耳にしながら、港の方へと視線を向けてみる。港から船を見た時同様に、港もまた遠かった。それでも、港の方が船よりも遥かに大きくて見晴らしもいいので、距離の割には意外とよく見えるものであった。

 しかし、そうは言ってもやはり遠いので、細かなところはまるで見えない。もう1度記憶を探ってみるも相変わらず記憶は曖昧で、水でどうこうという話を聞いたような覚えがあるような、無いような。

 しょうがないので、ヒヅキはフォルトゥナにその辺りを尋ねてみる事にした。

『フォルトゥナ』

『どうかされましたか?』

『遠くを見る魔法ってどんなのだったっけ?』

『それでしたら、身体強化を目に集中させればいいかと。それでも限度はありますが、ここからなら港の岸壁に立つ人物の顔ぐらいは分かるようになるかと存じます。ただ、残念ながら現在は誰の姿も確認出来ませんが』

『そういえば、そんな感じだったか。水がどうこうと言っていた記憶があったのだが』

 やはり自分の記憶は当てにならない。そうヒヅキは考えたが、直ぐにフォルトゥナがそちらの方も答えてくれた。

『水魔法を用いた方は手間が掛かりますが、それでも大勢に見せる場合には適しているかもしれませんね』

 そう言った後、フォルトゥナは説明をしていく。手元に小さな水の球をふたつ現出させた後、それの形を変えていく。

『何かしらの魔法で周囲を覆って筒状にすると見やすくなるかと』

 平べったい楕円とふっくらとした楕円に形を変えた水球の周囲を、黒い靄のようなもので覆ったフォルトゥナは、その先を港へと向けた後に水球を前後に動かす。

 それで準備が整ったのか、ヒヅキの眼前にそれを移動させる。

『魔法の維持に、こういう微調整まであって面倒なので、身体強化の方が楽ですね。こちらの方が調整次第でより遠くまで見る事は出来ますが』

 眼前のそれを覗き込みながら、ヒヅキはフォルトゥナの話を聞く。しっかりと港の様子は確認出来た。

『ただ、こちらは視界が狭いのも難点ですね。身体強化の方も通常時よりも視界が狭まりますが、それでもこれよりは広いですから』

 ヒヅキが顔を離すと、フォルトゥナは魔法を解除する。

『なので、ここから港ぐらいの距離であれば、身体強化で十分かと存じます』

『なるほど』

 曖昧ながらも、僅かに残っていた記憶の説明を思い出しながら、ヒヅキは頷く。一応分かったが、少し練習が必要そうだ。

『ありがとう。フォルトゥナ』

『ヒヅキ様のお役に立てたのであれば、至上の喜びで御座います』

 そう言って頭を下げたフォルトゥナを見た後、ヒヅキは習った通りに身体強化を目に集中させて港に視線を向けてみた。

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