表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1243/1509

旅路52

(まぁ、蓄魔石が結構な量があるから、そちらを使えば何とかなるかも?)

 とりあえず後は女性に任せるとして、ヒヅキはそんな事を思う。

 確かに魔石だけでなく蓄魔石も高品質な物だったようだが、その蓄魔石に蓄積されていた魔力は半量より少し多いぐらいではなかっただろうか。満杯まで魔力を溜めこんでいた蓄魔石はなかったように思えた。

 つまり、まずは魔力を充填させるところからやらなければならないという事。それだけでも結構な労力が必要そうだ。なまじ質が良いだけに、もしもヒヅキが一人で全てを満たすとしたら、一体どれだけの時間が掛かるのだろうか。数日、いや数ヶ月は必要だろう。

(ま、女性に英雄達と魔力を豊富に宿している面々が揃っているからな、案外簡単に終わったりするかもな)

 むしろ女性一人でも直ぐに終わるのではないだろうか。そんな思いすら湧いてくる。

 そんな自分の思考に、ヒヅキは小さく苦笑する。おそらくその予測は間違っていない気がして。

 そうしてヒヅキが今後について思考していると、町を移動する女性が目に入る。休憩場所を目指しているようなので、用事は済んだのだろう。

 ヒヅキは移動している女性を眺めながら、相変わらず変わった歩き方をするなと思った。

(歩いているのに滑るようだからな。いっそ浮いていると言われた方がよほど納得出来るのだが)

 歩いている女性は、身体が全くぶれない。上下は勿論のこと左右にも揺れないので、浮遊してそのままスススーっと滑っているような感じがするのだ。

 だが、実際は浮いている様子は無いし、足もしっかりと動いている。なので、よく分からないが、歩いているのに滑っていると言うのが正しいのかもしれない。

 それでいて移動が速い。ヒヅキと二人での旅の時も速くはあったが、それでも抑えめなのはヒヅキも理解していた。それが一人だと遠慮が要らないので、もの凄く速かった。本当に滑っているような速度で移動しているが、あれでも町中なので抑えめなのだろう。

 離れたところで見つけたというのに、女性はあっという間に休憩場所に到着した。女性が周囲を見回して状況を確認している間に、ヒヅキも英雄達が集団で休んでいる場所に向かう。

 しかし、そこにクロスが居ないのを確認した女性は一瞬考えるように眉を動かしたが、直ぐに気を取り直して英雄達に声を掛けていく。

 女性の掛け声で並んでいく英雄達は、訓練された軍隊のよう。元々別世界を生きた英雄達だというのに、女性は完全にそんな英雄達を掌握しているようだ。

(いや、それも今更か)

 そこで英雄達の魂を取り出した後の事を思い出し、ヒヅキは軽く肩を竦める。驚いたり戸惑ったり、そんな段階はとうの昔に過ぎている。今更英雄達を自在に操ってみせたとしても、女性ならそれぐらい出来るだろうという納得しかない。

 ヒヅキ達も並んだところで、女性は港の方へ行くことを告げる。どうやら道は見つからなかったようだ。

 港が近づくにつれ、海の方に大きな船が停泊してるのが確認出来た。沖の方に泊まっているそれは、遠目にも大きいのがよく分かるほどに大きい。

 これから予定通りに海に出ると思うので、ヒヅキはあの船に乗るのだろうかと考える。整備場で見た魔法道具を思えば、船を動かす人員はそこまで必要ないだろう。そもそも停泊している船は帆船ではないようだし。

 あの場所まで小舟で行くのだろうかと考えながら、ヒヅキ達は港に到着する。

 港はがらんとしていた。かつては活気に満ちていたであろう大きくて立派な港だというのに、今では小舟が何艘か波に合わせてプカプカ浮いているだけ。転覆している小舟もあるし、係船柱に繋げられている縄が海中へと下がっているのもあるので、中には沈没した船もあるのだろう。

 廃れたその港を歩いて、海の近くまで近寄っていく。岸壁が見えたところで足を止めると、女性は海上で停泊している船の方へと視線を向ける。

「……やはり」

 ポツリと零れたその言葉に呆れが多く含んでいるような気がしたヒヅキは、女性と同じように海上で停泊している大きな船へと視線を向けてみた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ