ギルド訪問2
シラユリに教えられた通りの道順でギルドを目指していたヒヅキは、道に迷っていた。
いや、正確には道に迷っているような気がしている、だろうか。
シラユリの所属するギルドのギルドハウスが建っているというその場所は、ギルド関係の建物が集まっている区画の一角らしいのだが、そこはえらく入り組んだ場所であった。
迷路の様な、という喩えはこういう路地の事を指すのだろうな、と頭に浮かぶほどに、背の高い建物に挟まれた、狭く似たような風景の続く路地は、長い直線が少なく、右に左にと幾度も細かく折れ曲がる為に、しっかり道を聞いてないと確実に迷子と化すだろうな、という道だった。
ヒヅキは手土産を手に、その通路をシラユリの言葉を信じて従いながら進む。
曰く、「道なりに進んで狭い路地に入ったら、最初の角を右、そのまま手近な曲がり角を右、左、左、左、右、左、右、左、左、右、右、左、右、真っ直ぐの途中にある黄色い建物が私たちのギルドハウスだよー」 らしい。
きっと、攻められる事を前提に造られた都市でもここまで面倒くさくないのではないか? そう思わずにはいられないほどに入り組み過ぎて、ヒヅキはもういっそ建物を壊してしまいたいという衝動すら頭に浮かぶ。
それを抑えるために空を見上げれば、建物の隙間から見える空を自由に飛ぶ鳥の姿が目に飛び込んだ。その空を翔る鳥の姿がこんなにも羨ましく映る日が来ようとは、ヒヅキ自身想像だにしていなかったほどであった。
視線を前に戻して辺りを見回せば、ここでよく暮らせるものだと、呆れ混じりに感嘆せざるおえないだろう。
そんな道を、シラユリが数日前に口頭で行った説明だけを頼りに進む。
ひとつひとつ確認しながら、指折り数を数えながら曲がりまくると、やっとこさ目的地の黄色い建物を確認する事が出来た。
これでシラユリが居なかったら悲しいなーと思いながらも、ヒヅキはギルドハウスの扉を軽く叩き、来訪を伝える。
程なくして、細く扉が開かれてこちらを窺う視線が向けらる。その人物に、ヒヅキは来訪の理由を伝えた。
それで一度閉まった扉が再び開かれると、そこには白銀の髪を長く伸ばし、露出の少ない服に身を包んだ女性が立っていた。その服の袖から僅かに覗く肌は驚くほどに白く、ヒヅキは全体的に色素の薄い女性だという印象を抱いた。
「ようこそ。いらっしゃいませ」
女性は鮮やかな所作で頭を下げると、ヒヅキをギルドハウス内へと通してくれる。
「本日はシラユリさんに御用という話でしたね」
女性がヒヅキの来訪の目的を確認してきたので、ヒヅキはそれに頷きを返した。
「少々お待ちください」
ヒヅキの頷きを認めると、女性はヒヅキをその場に待たせて奥へと下がる。それに、どうやらシラユリはギルドハウスに居るようだと、ヒヅキは安堵の息を吐いたのだった。