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旅路48

 では、ヒヅキには魔石や蓄魔石は不要かと言えば、そうではない。確かに使用に適した魔法道具はなさそうだが、それでも使い所は多い。魔法道具に限らずとも、魔石から魔力を抽出して使用する事も出来るし、余剰分の魔力を蓄魔石に溜めておいて、何かの時に活用するという事だって出来る。

 それに、ヒヅキは魔法道具の作製にも興味があるので、その際にも材料として使う事も出来るだろう。つまりは無用の長物という訳ではない。まぁ、スキアに蹂躙されている世界なので、売ってお金にするという事は難しいだろうが。

 持っていても使い道には困らなさそうだと改めて確認したところで、フォルトゥナに声を掛ける。片付けもあるので、そろそろ準備しないと休憩場所に戻るのが遅くなってしまう。

 フォルトゥナが調べるのを終えたのを確認したところで、ヒヅキは見つけた魔石と蓄魔石を全て空間収納に仕舞えるのか尋ねてみた。

「可能ですよ。容量的にはそこの長箱ごとでも問題ないですし。ああ、しかしその場合、魔法の罠は念の為に無力化していた方がいいでしょうが」

「なるほど。まぁ、長箱は要らないから、魔石と蓄魔石が入っていたもうひとつの方の箱に詰めるか、包んでいる布だけでいいと思う」

「では、布で包んだまま収納しておきます。その方がどちらかだけ必要という時に取り出しやすいですから」

「それでよろしく」

「はい! お任せください!!」

 ヒヅキが頼むと、キラキラと瞳を輝かせて元気のいい返事を寄越すフォルトゥナ。何だかその感じも久しぶりだなと思いながらも、ヒヅキは地下倉庫の片付けもフォルトゥナに任せて地上に出た。

「さて、こっちはこっちで片づけておくか」

 放棄された場所なのでもう誰も来ないだろうし、片付けは必要ないとは思うが、それでも何となく調べたからには多少は片づけておこうと思った。その為の時間は確保している訳だし。

 片づけるといっても、フォルトゥナはそこまで散らかしていた訳でもない。むしろ調べながら片づけていたようで、棚から外に出ている書類の数は少ない。

 机などもある程度整えられているので、ヒヅキが片づけようと思っていても、ほとんど散らかっていないかの確認だけで終わった。

 地下倉庫の方も似たようなものだったので、ヒヅキが部屋の確認を終えたところでフォルトゥナが地下から出てきて、地下倉庫への扉を閉じる。

 そのまま二人は部屋の外に出て、舟が並ぶ整備場を軽く見回ってから建物の外に出た。鍵を壊したとはいえ、一応扉としては機能するように加減はしてあったので、問題なく扉の開閉は出来た。

 建物の外に出た後は休憩場所を目指して歩いていく。

 行きは河沿いの道を利用したので、帰りは町中の道を利用してみる事にした。道が複雑に入り組んでいるようなので、その辺りを気をつけながら。

 最悪建物の上にでも上がればいいかと思いながら、ヒヅキはフォルトゥナと共に町中を進む。

『この辺りは住居が多いのかな?』

 周囲には誰も居ないだろうが、それでも見知らぬ地の外なので、ヒヅキは遠話でフォルトゥナに話し掛ける。

『何かの店という風でもないので、おそらくそうかと』

『そうか。建物の方は立派だが、ここは道が細いな』

『はい。すれ違うのもやっとでしょうね』

『……そうだな』

 フォルトゥナの言うように、すれ違うのもギリギリというほどの幅の道を進む二人。

 ヒヅキは平然とそう返すフォルトゥナに視線を向ける。

 フォルトゥナはそう言いながらも、ヒヅキの隣で身体を横向きにして、ヒヅキの腕を抱き込むようにして掴んでいる。つまりは、フォルトゥナが身体を横向きにしているとはいえ、二人並んで進むには狭い道でわざわざ隣を進んでいるのだ。それもしっかり道は狭いと認識しながら。

 元々フォルトゥナはヒヅキの隣を歩く事が多いとはいえ、こういう場合では後ろを歩いていたものだ。それが今では強引に隣を歩いている。

(放置し過ぎたということなのだろうか)

 エルフの国で再会後、しばらく行動を共にしていたヒヅキとフォルトゥナだが、ドワーフの国で別れていた。それも何も告げずにヒヅキから一方的になので、あれはヒヅキ自身、自分に非があると思っていた。面倒だったとはいえ、流石に離れるのに放置は酷かっただろう。今にしてみればヒヅキにもそう思えた。

 元々フォルトゥナはヒヅキに対して好意全開なので、置いていかれた反動と考えればこうなってもしょうがないのかもしれない。そう思うと、ヒヅキも無下には出来ない気になってくる。

 見られたところで困りはしないが、それでも誰かに見られているという事でもないし、ここが敵地という訳でもないので、しばらくこのままでもいいかとヒヅキは思ったのだった。

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