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旅路45

 ヒヅキが地下に下りた頃には、既にフォルトゥナが長箱を調べ終えた辺りだった。

 光球はヒヅキが地下から出る時に消していたので暗いはずなのだが、フォルトゥナは明かりもつけずに作業を始める。

 フォルトゥナから少し離れた辺りからヒヅキはフォルトゥナの作業を眺める。やはり暗いのでヒヅキは光球を出すと、それを天井付近まで浮かべておく。

 それでフォルトゥナの手元が僅かに明るくなったので、横から覗いているヒヅキにも多少は手元が見えるようになった。

 とはいえ、やはり地下が狭いので満足に眺める事は難しい。もっとも、フォルトゥナの作業は直ぐに終わったので、それほど眺める時間もなかったのだが。

「開きました」

 簡単に解錠したフォルトゥナは、振り返ってヒヅキにそう告げる。

「中に何が入ってる?」

 この地下の倉庫でもっとも厳重に保管されていたので、気になってヒヅキが問うと、フォルトゥナは頷いて長箱のふたを開ける。

 それは金属製の重そうなふたであったが、フォルトゥナにとっては大した重さではないようだ。

 ふたを開けると、中から一回り小さな箱が出てくる。軽く調べた後に慎重にそれを取り出して床に置いたフォルトゥナは、その箱を調べていく。

「どうやらこの箱には錠が付いているだけのようです」

 つまり取り出した箱には魔法的な罠や防護は無いという事。外の長箱にはそれが施されていたのでそれで十分という事か、それとも別の意図があるのか。

 ヒヅキがそんな事を考えている内に解錠したフォルトゥナは、ヒヅキの方を見上げる。

 その問うような瞳に、ヒヅキはフォルトゥナが箱を開けていいかと訊いているのだと理解して頷く。

 ヒヅキが頷いたのを確認したフォルトゥナは、箱に手を掛けて、ゆっくりとふたを開ける。箱の中身は何かの布で包まれていた。

 フォルトゥナが丁寧な手つきでその布を取り払うと、中から姿を現したのは、指の先ほどの不揃いな半透明の結晶。それも箱一杯にである。

「これは……魔石か?」

 ヒヅキの呟きに、その内のひとつを手に取って眺めたフォルトゥナが頷く。

「そのようです。純度も結構高いようなので、ここに在るのは全て魔力が固まって出来た方の魔石なのでしょう」

「ほぅ。それがこの数か」

 パッと見ただけでも、一抱えでは無理そうな数が詰められている。箱自体も結構大きいので、中にどれだけの数が入っているというのか。

 フォルトゥナは魔石が入れられている布を持ち上げて、他に何かないかと中を確認している。その際にジャラジャラと魔石が動く音がするが、それが一層現実味を感じさせない。

 魔石というのは、少なくとも人間界では希少品に類する品である。それは魔力のみの魔石だけではなく、鉱物を核にした魔石も同様である。

 その両者では、当然ながら魔力が固まって出来た魔石の方が質が高い。希少性でもそちらの方が上だろう。

 人間界ではほとんど見かけないそれが、ここには箱一杯に詰め込まれているのである。現実感が無いと言うか、この箱を人間界に持っていけば、それを売るだけで何代先まで遊んで暮らせるのだろうかというほどだ。

(やはり何処かに魔力が溜まっているのだろうか?)

 でなければ、これ程の数を揃えるのは難しいだろう。金を積めば手に入るという代物でもないのだから。

 それをここでは、船に積んだ魔法道具の動力用として大量に消費しているのである。実際にどれだけ使用されているのかは知らないが、それでも巡視とはいえただの船に載せるのだ、それだけ大量に供給出来て、しかも供給が安定しているという事なのだろう。

 その事実にヒヅキが唸っていると、フォルトゥナは布の下に別の布が在るのを発見する。

 フォルトゥナは魔石の入った布を丁寧に取り出して床の上に置くと、箱の底に在った布の中身を確認していく。

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