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旅路38

 何処かに鍵が落ちていないかと周囲を見回してみるも、流石にそんな都合よく落ちている訳がない。もしも落ちていたら、それはそれで心配になってしまうだろう。

 それよりも、もしかしたら建物周辺にでも隠しているのかもしれないと思い、軽く探してみた。しかし、何かの裏に隠しているとか、置物の下敷きにしているとかはなく、そもそも隠せそうな物もかなり少ないなかった。

 もっとも、おそらくこの場所は検問所だと思うので、ヒヅキも最初からそんな危うい隠し場所など全く期待していなかったが。

 それでも鍵を探したという事実は残るので、誰に対してする訳ではないが、とりあえずこれで扉を破壊してもいいだろう。舟が必要だろうし。

(……まぁ、問題ないな)

 心の中でそう呟くと、ヒヅキは光の剣で器用に扉の鍵の部分を破壊する。おかげで扉を閉めておけば、一見すると変わったところが何処も無いように見える。

 ヒヅキは鍵が壊された扉を開くと室内に入る。室内は薄暗いが問題はない。

 室内は河に向かってコの字型になっており、中に河から水を取り込んでいる。

 そこには舟が繋ぎ止められており、周囲には揚げられた舟以外にも整備道具が色々と置かれていた。一応小さな部屋も在るようだが、ここは舟の整備のための建物らしい。

 水が入ってきているところには、水上に両開きの大きな水門が在る。当然ながら現在水門は閉められており、水中には鉄の柵が見えるので、水中からの侵入は出来ないようになっている。

「さて、どの舟にしようか」

 とりあえず今必要なのは、河を向こう岸まで渡る足なので小舟でいい。乗るのはヒヅキとフォルトゥナの二人だけなのだから。

 後は問題なく乗れるかどうかだ。水面に浮かんでいる舟は浸水はしていないのだろうが、それでも万全とは限らないだろう。どれだけ長い間放置されていたのか分からないので、もしかしたら動かした途端に浸水が始まるかもしれない。

 舟の造り自体はとても簡単なものなので、ヒヅキでも問題ないかどうかぐらいは何とか判りそうだ。

(揚げられている舟を使用した方がいいか?)

 その方がいちいち水面を覗き込まなくとも陸に在るので、もしかしたらそちらの方が早いのかもしれない。しかし、陸から降ろして水に入れないといけないので、それはそれで大変そうだ。それに、いきなり水に浸けても問題ないのだろうか? その辺りの判断はヒヅキにはつかないので、ヒヅキは一旦そちらは諦める事にする。他に良さそうな舟がなかったら、そちらも見てみればいいだろう。

 そういう訳で、フォルトゥナと共に舟をひとつずつ確認していく。1艘だけある船には用は無いので、それは措いておく。

 舟は最も簡素なモノだと、木を削りだしたような原始的な舟が在る。それから漁村で見たような2艘が連結した舟や、船を小型化したようなしっかりとした造りの舟など色々と浮いている。

 櫂も舟の中や整備道具の中などに置かれていて、その長さもまちまち。それらをひとつひとつ調べていると、フォルトゥナが少し離れた場所に在った道具置き場から何かを見つけてヒヅキに声を掛ける。

『こんな物が在りました』

『ん?』

 ヒヅキがその声に振り返ってみると、フォルトゥナが棒状の物を頭上に掲げていた。

 それを見て、ヒヅキは首を傾げながらも近づいてみる。

「それは?」

「魔法道具のようです」

 ヒヅキが近づいて問い掛けると、周囲に誰もいない静かな場所だからか、フォルトゥナは珍しく遠話ではなく普通に声を出して返事をする。

「魔法道具?」

 フォルトゥナの返答に、ヒヅキは首を傾げて繁々とフォルトゥナの持つ棒に目を向ける。フォルトゥナもその棒をヒヅキに差し出すように持っている手を前に出した。

「ふむ」

 ヒヅキは差し出された棒を受け取ると、その手にズシリとした重みが伝わる。見た目通りに金属の棒のようだ。

 そのまま軽く振って重さを確かめてみる。みっしりと中に金属が詰まっているのか、見た目以上に重い気がする。

 それでも片手で持てないほどでもないので、そのまま調べてみる事にした。

「うーん……これは?」

 特に罠などが組み込まれている訳では無いそれは直ぐに調べ終わる。どうやら周囲の水を吸って吐くだけの魔法道具のようだ。しかし、それだけだ。それが何の役に立つというのか。確かに吸える水の量は見た目に比して大した量ではあったが。

 しかし、分かったのはそれだけで、その魔法道具の用途までは分からず、ヒヅキは発見者であるフォルトゥナに問い掛けてみる。ついでに周囲にも目を向けた。

 そうすると、フォルトゥナは考えるような仕草を見せた後、それが何かに思い当たったのか口を開いた。

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