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旅路36

 休憩場所に戻る道中、ヒヅキは思い出したかのように女性に尋ねる。

「そういえば、ここで何をしていたのですか?」

 ヒヅキも漁村を調べはしたが、特に目ぼしいものは無かった。なので、女性がわざわざこんな場所まで来て何をしていたのだろうかと、ヒヅキは気になっていた。

 その問いを受けて女性は立ち止まると、振り返って漁村の奥の方を指差す。

「向こうの方にこの場所の長だった者の家が在るのですが、そこは避難場所としての側面も持っていたようで、少し離れた場所まで地下からの抜け道が在るのです」

「こんな村にですか?」

 ヒヅキは驚いた声を出す。

 現在ヒヅキ達が居る漁村は、規模としてはそれほど大きくはない。おそらく数十人から多くとも百人にも満たないぐらいしか暮らしていなかったような村だろう。

 どんな種族が暮らしていたかは知らないが、建っている家々は古く、それでいて木造だ。その家の大きさから推測するに、住民はヒヅキと然程変わらぬ背恰好だったと思われる。

 そんな小規模で決して裕福とは思えない村に地下があるうえに抜け道まであるとは、それは中々に不釣り合いな気がした。

「ええ。周囲が危険というのもあるのでしょうが、それだけ古い村なのでしょう」

「ふむ……それで、そこで何を?」

 歴史があるというだけでは説得力に欠けるが、しかしそんな事はどうでもいいので、女性が何をしていたのかの話に戻す。

 ヒヅキが漁村内を歩き回っても女性を見つけられなかったのは、その地下か抜け道の先に居たからだろう。

「その抜け道が、今代の神が住まう地への道の候補だったのですよ」

「そんな場所が?」

「ええ、そんな場所が。まぁ、普通に通るだけで別の世界へ行けるというモノではありませんが」

「そうですね」

 今までも、わざわざ調べてあるかないかを探していたぐらいだ。であれば、そんな簡単な方法で道が繋がるとも思えない。

「それで、そこは違ったので?」

「ええ。念の為に調べただけですから。本命の候補のひとつはもう少し先ですね。そう遠くはないので、次はそこです」

「そうですか。そこはどんな場所なのですか?」

「港町ですよ。何事もなければ、ですが」

「まぁ、そうですね」

 スキアによって破壊されているかもしれないし、ここのように放棄されているかもしれない。何があるか分からないが、通常通りの町の姿である可能性は非常に低いだろう。なので、期待はしない。

「そして、道が見つからなかった場合ですが、そこで手頃な船でも残っていれば、それに乗って海に出ようかと思っています」

「海にですか」

「ええ。その次の候補が遠いというのもありますが、候補に海上もありますから」

「海上もですか。神は無節操ですね」

「そうですね。それでも海中や地中にないだけマシだと思いますよ」

「それはまぁ、確かにそうですね」

 ヒヅキは女性の言葉に頷く。神の性格を考えれば、そういった場所に在ってもおかしくはないだろう。どうやっても到達不可能な場所という訳でもないのだから。

 なので、そういった場所には無いというだけで随分とまともに思えてしまった。普通に考えれば、今までの場所も大概面倒な場所ではあったのだが。

 なんにせよ、これから先も色々とありそうだと考えたところで、休憩場所に到着する。変わらず英雄達は大人しくその場に待っていた。

 休憩の終わりを告げて隊列を整えると、早速次の目的地である港町へと向けて歩き出す。港町があるのは漁村とは反対方向らしく、漁村に背を向けて歩いていく。

 海岸沿いの道は砂浜に木の板を置いただけらしく、何枚もの木の板が並べられて先まで続いている。砂が載ってはいるが、埋没はしていない。

 沿岸沿いに遠くの方へと視線を向けてみると、遠くの方に白っぽい建物のような物が在るのが見えた気がした。

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