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旅路29

 木が消滅したのを見て、ヒヅキはそういえばと思い出す。

 フォルトゥナは他と違った魔法を行使することが出来た。それは消滅魔法。万能という訳ではないがかなり強力な魔法で、文字通りに対象を消し去る魔法。

 この消滅魔法が原因でフォルトゥナはエルフの国では忌み嫌われていたのだが、それは過ぎた話。

 今し方奇麗に木を消し去ったのは、その消滅魔法だろう。あまり見る機会が無いので、知っていても驚いてしまう。だが、それ以上に興味深かった。

 フォルトゥナの協力により使用した木を処分した後、ヒヅキはフォルトゥナに礼を言ってから片付けを済ませて、忘れ物が無いのを確認する。気づけばそろそろ戻っていた方がいいぐらいの時間になっていた。

 来た道を戻るだけなので、帰りも森の中を見ながら移動する。鳥のさえずりは聞こえるが、姿は見えない。結局動物の姿も確認出来なかった。もう少し奥まで行けば何か居たのだろうかと思うも、それよりも練習の方が有意義だったかと思い直す。

 しばらく歩くと、森の外に出る。遠目だが英雄達の姿が少しだけ見えた。どうやらまだ休憩しているようだ。

 そのまま歩き、休憩場所に到着する。周囲を見回すと、少し離れたところに女性の姿があった。以前に見た今代の神への道探しと似た様子だったので、やはりここは道の候補だったらしい。

 見ただけで後どれぐらいで終わるかは分からないが、ヒヅキ達はそれなりに長い時間池の方に行っていたので、そう掛からずに終わる事だろう。

 その間、ヒヅキは防水布を敷いて大人しく待つ事にする。現在地は入ってきた道から少し移動した場所だが、地面は固くあまり凸凹していないうえに小石も少ないので、休憩するのに適した場所であった。このまま野営をしてもいいぐらい。

 そこでのんびりと休憩しつつ、女性の作業が終わるのを待つ。ここの道は候補ではあるが、おそらく本命ではないだろう。なので、調べ終われば直ぐに移動となる。

 何かするという事も無いので、ヒヅキは軽く魔法を行使しながら時間を潰す。危険性の少ない簡単な魔法でも、魔法の練習としては十分機能する。

 それに、折角隣にフォルトゥナが居るので、ヒヅキはフォルトゥナに魔法の助言や知識を分けてもらう。フォルトゥナはかなり勉強したようで、魔法について造詣が深い。

 そうこうしているうちに女性の作業が終わる。やはり空振りに終わったようだが、ヒヅキとしては実に有意義な時間であった。

 移動を再開させるといっても現在地は行き止まりなので、まずは戻るところから始める。洞窟を通って崖の道に戻った後は、森の方へと下りていく。

 森までは少し距離があった。近くに在るというのに、そこまでが長い。途中から見えた終わりの方は、崖の道がそのまま森の中へと入るように続いていた。

 女性を先頭に崖の道を進み、ようやく道の終わりに到着する。そのまま森の中に入ると、甘い匂いに包まれた。

「ん、これは?」

 それは花の匂いだろうか。甘ったるいような華やかなような、それでいて頭の奥に響くようなキツイ匂い。その強い匂いに、ヒヅキは思わず顔を顰めそうになった。

 周囲に目を向けるも、そこには木が林立するばかりで花の姿は無いように思える。しかし、強烈なその匂いは、やはり花の匂いに思えて、ヒヅキは首を捻る。

 他の者達は大丈夫なのだろうかと思うも、全員気にしていない様子。おそらく風の結界のような遮断効果のある魔法でも使用しているのだろう。そう思うが、においで周囲を調べるという方法もあるので、全員が全員においを遮断しているとも思えなかった。

 では、気にならないということだろうか。それとも気にしないという可能性もある。ヒヅキも今のところ匂いがきついという以外には体調不良とかもないので、毒ということはないのかもしれない。

 とりあえず、移動しながら周囲へと視線を向けて匂いの発生源を探してみる。森の中をそれなりの速度でずんずんと進んでいるが、匂いは中々消えてはくれなかった。よほど広範囲に匂いが漂っているようだ。

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