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旅路28

 光の魔法を剣に纏わせた後、フォルトゥナから少し離れた場所で軽く振ってみたが、特に問題はなさそうだった。周囲を見回してみても木ぐらいしか試し切りに適していそうなモノも無かったので、近くの木を1本斬ってみる事にする。

「………………」

 木に歩み寄った後、ヒヅキは木と剣をジッと眺め、少し思いついてそっと剣を木に触れさせる。そうすると、ろくに力を籠めずとも剣が木に呑み込まれるように入っていく。いや、正確にはそれでも斬っているのだろうが、ヒヅキはほぼ剣を持っているだけなのでそんな感覚は無い。

(切れ味がかなり鋭そうだとは思ったが、これほどとは……もしかして、魔法を纏わせる前の剣でも出来たのだろうか?)

 女性から預かっている剣は、最初から次元を斬る事が出来るような規格外の剣であったので、もしかしたら魔法を纏わせたから力を籠めずとも木が斬れたのではなく、これに関しては元々という可能性もあるだろう。

 そのまま水平に剣を動かすと、幻を斬ったかのように手ごたえが無かった。引っ掛かる感じも一切無かったので、やはり幻を斬ったのだろうかと疑問を抱き、ヒヅキは未だに立ったままの木にそっと触れてみた。

 そうすると、僅かに触れたその圧で木が向こう側へと倒れていく。やはり幻ではなかったようだと思いつつも、ヒヅキは急いで跳び退いて木から距離を取る。

 木は完全に倒れる前に、近くの木に寄りかかるようにして止まる。ヒヅキがもう1度近づいて木を半ばから切断して、完全に木を地面に倒した。

 その後は運びやすいように木を切り分け、池の方へと運ぶ。途中からフォルトゥナも手伝い始めたので、運び出しは直ぐに終わった。

 池の近くに幾つかに切り分けた木を並べ、ヒヅキは折角だからとそれを利用して試し斬りをしていく。切れ味は理解しているので、正直あんまり意味がないような気もするが。

 とりあえず斬った木を周囲に並べ、中心で剣を振り回してみる事にする。

 ヒヅキは誰かに剣術を習った訳ではないので、正式な型のようなものはあまり知らない。なので、身体能力に飽かせてとにかく剣を振って相手を斬るだけだ。不格好だが相手は主にスキアなので、その程度で問題ない。というよりも、対人の剣では逆にやり難いかもしれない。

 それでも動きに流れがあった方が動きやすいだろうとは思うので、周囲に並べた木を止まることなく順番に斬りつけていく。本番ではそんな風にお行儀よくはいかないが、剣を振り回した感触を知りたいだけなので、それで問題ない。

(やはり、光の剣と違って重さのある剣は疲れるな)

 光の剣は魔法の剣なのでほぼ重さがない。なのでいくら振り回そうとも、魔力を消耗するだけで重さは感じないのだ。打ち合うとまた違うが、ほとんどが抵抗なく斬れるのでその辺りは困らない。

 だが、今ヒヅキが手にしている剣は、何を使っているかは知らないが、金属を鍛えたものである。つまりは金属の塊だ。重くないはずがない。

 更にそれを振り回すのだから、光の剣の時とはまた違った辛さがあった。魔法を纏わせているので、光の剣を単体で運用するよりも少ないとはいえ、魔力も消耗する。

 ヒヅキの身体能力であれば振り回すのは問題ないとはいえ、今まで通りの運用という訳にはいかないだろう。疲労の度合いが変わってくるのだから。

(今まで通り長期戦はしないが)

 ヒヅキは長々と戦うという事をほとんどしないので、考えはするが、疲労の度合いの変化はそこまで重く受け止めなくてもいいだろう。それに、今では英雄達も増えているので、ヒヅキが戦う場面はほぼ無いと思われた。

 剣を振った感触を頭の中に思い浮かべながら、今後の方針を考えていく。そうしながら、使用した木を集める。

『その木は何かに使用するのですか?』

 バラバラになった木を1ヵ所に集めたところで、片付けを手伝ってくれたフォルトゥナがそう問い掛けてきた。

『いや、もう要らないよ』

『では、私の方で処理しましょうか?』

『ああ、頼むよ』

 木の処分をどうしようかと思っていたので、ヒヅキはフォルトゥナの申し出を承諾する。

 どうするのかと思いながら集めた木から少し離れると、フォルトゥナはそれに軽く手を向ける。ただそれだけで、集めた木は全て消滅した。

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