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旅路25

 崖の道を進んでいく。どうやら道は緩やかに下っているようで、徐々に森が近づいてくる。遠くの山も高さが増したような気がした。

 途中、道が少し崖の中に入り込み、洞窟みたいになった場所を通る。そこは道幅がやや拡がった場所で、薄い壁が外の景色を遮っている。

 女性がそこで休憩を取る事を告げると、各々好きに休んでいく。現在居る場所は薄壁が飛んでくる河の水を遮っているからか、地面があまり濡れていない。小石も少ないようなので、座るにはいい場所だろう。

 防水布を敷いたヒヅキは、河とは反対側の壁を背にして腰掛ける。隣には当然のようにフォルトゥナが腰掛けた。

 相変わらず細い一本道で移動が出来ないので、ヒヅキは大人しく休憩する。

(そろそろ剣に光の魔法を纏う練習もしたいのだけれども……)

 結局森を出てから1度も試していない事を思い出し、ヒヅキは小さく息を吐き出す。上手くいかないものだと思うも、今までもそんな感じだったので直ぐにその考えは霧散する。

 そこでヒヅキはふと思いついて少し考えると、風の結界を一旦解除してみる。そうすると、ひんやりとした湿った空気と共に、ザァーザァーと水が勢いよく流れる音が耳に届いた。

 今までが今までだったからか、それに何だか癒される気分になり、ヒヅキはしばらくこのままでもいいかなと思う。魔力の濃度がおかしいとか、異臭がするとかはないので問題はないだろう。むしろ風の結界が無い方が今はよさそうだ。

 そうしてしばし休息を取った後、休憩を終えて先へと進む。

 水気を含んだ冷えた空気と河の音を新鮮に感じながら、足下に気をつけつつ、女性の後に続いてヒヅキは崖の道を歩く。

 緩やかながらも、あちらこちらへと蛇行する崖の道。それに沿うようにして河も続く。

 ヒヅキの耳に大量の水が落ちていく音が届いてくるも、先の様子が窺えないので、まだ音の発生源は見えてこない。

 しかしそれも、少しすれば視界に入ってきた。緩やかに下ったとはいえ、それでもまだかなりの高所から落ちていく水と、その先の森。崖の道は滝と同じ場所で途切れているように見える。

 道の終端に近づいてみると、道の終わりの横に道が続いているのが確認出来た。相変わらず道幅は狭いが、崖を上から下へと垂直に降りるよりはマシだろう。

 そのまま道を折れて進んでいく。道幅は更に狭くなったが、それでも一人でギリギリというほどではない。まだ足1本ぐらいの余裕はある。

 崖から見下ろす森は、結構深いように見えた。それでも疎らながらも地面が見えている箇所があるようなので、前に通った密林ほど深くはないだろう。

 折角上から森の全容が窺えるので、何かないかとヒヅキはあちらこちらへと視線を向ける。

 しかし、これといって目を引くような物は無い。強いて言えば、小さな湖が何ヵ所か確認出来たぐらいだろう。森には河が流れ込んでいるで、水には困らなさそうだ。

 そんな場所なので動物でも居ないかと期待したのだが、上から見る限り発見出来なかった。絶滅した訳ではないと思うのだが、一体何処に行ったというのか。ただ隠れているだけならばいいのだが。

 足下に気をつけつつ、そんな事を考えながら森を眺めていると、気づけば結構下っていたようだ。そのまま近くなった森の中へと下りていくのかと思ったが、途中で道が分かれており、女性は森に背を向けて崖の中へと折れた道を進んでいく。

 別行動する訳にもいかないので、当然ながらヒヅキは女性の後を追って道を曲がる。ヒヅキは森に行きたかった訳ではなかったので、その辺りは別にどうでもいいのだが。

 崖の中は暗かったが、それでも少し先に明かりが見えているので、そう長い道ではないらしい。英雄達もちゃんと付いてきているようなので問題はない。

 それから少しして、崖の中から外に出る。目に飛び込んできた強い光に僅かな間目を閉じた後、目を薄っすらと開ける。

 細めた目から周囲を見回してみると、光に満ちているそこは、周囲を高い壁に囲われた場所であった。

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