旅路19
何かしらの跡地の横を通り、先へと進んでいく。
神殿か何かの先は、石で舗装された跡のようなものが少し足下に遺っている。その遺っている石の部分が砂や土に埋もれていたり、破損したりしている。
そうして途切れ途切れながらも、先の方まで続いているようだ。見たところかなり古そうなので、おそらく神殿のような跡と同年代頃の道なのだろう。
現在ヒヅキ達が進んでいる道は、岩間に出来た細い道。道幅は横になればギリギリ行き交う事が出来そうというぐらいに狭く、両側に岩壁が聳え、視界は前後にしか通らない。
先程の神殿跡のような場所と併せて考えれば、何だかとても厳かな雰囲気がする。現在通っている道がまだしっかりと舗装されていた時には、通る際に身が引き締まる思いをしたのかもしれない。しかし、今はただの細いだけの道だ。伏兵とかも居ないだろうし。
視線を上の方に向けると、岩壁の上の方は大きな木々が茂っているのか、道を覆い尽くすように両脇の岩の上から枝葉が伸びている。完全に日を遮るほどではないが、何だか森林浴でもしている気分になるぐらいには、適度に日を遮ってくれた
そんな細道だが、意外と長い。真っ直ぐと延びる細道は、先が少し霞んで見えるほど。
ヒヅキはただひたすらに真っ直ぐな道を進みながら、段々はっきりと見えてきた道の終わりに目を向ける。
道の終わりは眩い輝きを放っていて、道の先が開けた場所なのだと教えてくれる。その眩さに僅かに目を細めて先の方を窺えば、何やら大木が確認出来た。
更にしばらく進み、細い道が終わる。その先は広い場所になっており、大木が枝葉を拡げて木陰を作っていた。
「ここで一旦休憩にします」
全員が細い道から広場に出た後、女性はそう告げる。
各々が好きなように休憩し始めたので、ヒヅキは少し周囲を散策してみる事にした。あの神殿跡のような場所に、そこへと至る道。そんなモノが揃っている以上、近くに集落がありそうだと思ったのだ。もっとも、神殿跡のような場所も細い道も放棄されてかなりの年月が経過しているようなので、仮に集落が在っても既に跡しかないだろうが。
そんな事を思いながら、足下に視線を向けて広場の周囲を歩く。少しして、何か建物でも建っていたような基礎の跡を発見したが、残念ながら集落というほどの規模でもない。
なので、別の場所に集落はあるのだろう。そう思って更に周辺を探ってみるが、先程発見した基礎の跡のような場所以外は普通の広場のようで、何かしら発見がある訳でもなかった。
ヒヅキが周囲の散策を終えて皆が休憩している場所へと戻ってくると、優しく木陰を作っている大木を根元から見上げている女性の姿があった。
現在は休憩中なので好きに寛いでいいのだが、ヒヅキにはその光景が何だか珍しく思えた。女性は休憩中は大抵ジッとしている場合が多かった記憶がある。
それに、大木を見上げる女性の表情は何だか鋭く、何かを探しているようでもあった。
そこまで気がついたところで、もしかしてとヒヅキは考える。あの大木の上に今代の神が住まう地へと続く道が在るというのだろうか。
やや距離を取った場所に防水布を敷いて腰かけ、ヒヅキは女性の動向を眺める。
しばらく大木を見上げたまま、忙しなく幹や枝葉に視線を向けていた女性は、顔を戻して小さく息を吐く。
その様子に、ヒヅキは終わったのだろうかと思う。もしそうなら、芳しい結果ではなかったようだと、ヒヅキは女性の言動からそう思うも、ここはまだ女性の中での有力候補という場所でもないので、その方が確率としては高いのだろう。
女性はすぐさま切り替えたようで表情を引き締めると、休憩の終わりを告げる為にヒヅキ達が休憩している方へと振り返った。




