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旅路17

 何もおかしなところが見つけられなかったヒヅキは、女性の方に顔を向けて首を傾げる。

「この湖に何があるのですか?」

 分からないならば訊けばいい。元々そのつもりだったので、ヒヅキがそのまま問うと、女性は湖の近くへと歩き出す。

 ヒヅキはその後を追う。湖からそこまで離れていなかったので、直ぐに湖の縁に到着した。

「この水は普通の水ではないのですよ」

「と、いいますと?」

 屈んで湖の中に手を入れると、湖の水を掬い上げる女性。

「これは魔力ですね」

「魔力ですか?」

 女性の言葉に首を傾げたヒヅキだが、直ぐに自身の持ち物を思い出す。それは魔力水。遺跡から見つけた水瓶から幾らでも出てくるそれは、魔力を含む水だったはず。水で魔力であるならば、そういう事かとヒヅキは考えた。

 しかし、女性はヒヅキがそう考えることを予測していたようで、小さく首を振ると説明を行う。

「ヒヅキがよく飲んでいる魔力水とこれは違いますよ。……ああ、広義で言えば同じかもしれませんが、モノとしては違いますね」

「そうなのですか?」

「ええ。ヒヅキの飲む魔力水は魔力を溶かした水ですが、この湖の水は魔力そのものなのです」

「……それはどういう?」

 女性の言葉を理解しようと努めたヒヅキだが、結局よく解らずにそれも質問した。

「魔力が溜まって出来た湖がここなのです。簡単に言えば、この湖は魔力だまりという事ですね」

「魔力だまりで湖になるのですか?」

 何かしらの要因によって魔力が集まって留まる現象を魔力だまりというが、それで魔物が生まれるなどはあっても、湖が生まれるという話は聞いたことがなかった。そもそも何故魔力が水になっているというのか。

「かなり稀な事例ですがね。ただ、元々魔力というのは形がありませんから、何に変容しようともおかしくはないのですが」

「それはまぁ、確かに」

 この世界には魔法というものがある。それは魔力を水にも火にも土にも風にもあらゆるものに変容させる方法。であれば、魔力だまりが湖になってもおかしくはないのではなかろうか。何となくヒヅキはそう納得した。

「まぁ、これは蛇足ではありますが、こういった水を基にして創られたのがウィンディーネですよ」

「え!? そうなんですか?」

「ええ。神の力が介在しているとはいえ、理屈だけで言えば、この湖からアレのような存在が生み出せるという事ですね」

「………………」

 それには何と言えばいいのかヒヅキは困惑してしまう。ウィンディーネのような存在など、たとえ生みだせるのだとしても生み出したくはないとは思っているが。

「まぁそういう訳ですので、この魔力を吸った影響であの木は魔力を蓄えるようになったのでしょう」

 そう言った後、女性は湖の中を覗き込むようにして身体を前に出す。

「ほら、そこに根っこが見えますし」

 湖面から水の中を指差す女性に、ヒヅキも湖の中を覗き込んでみた。そうすると、手前の土の中から木の根の先端っぽいものが湖の中に飛び出しているのが見える。

「確かに。あれから水を吸っているのですね」

「ええ。この周辺の土壌にも滲みているでしょうからね」

「それで水嵩が減らないのでしょうか?」

 魔力で出来た水であるので、普通の水とは違う。水源のように何処かから湧いて出てくるなどという事もないだろう。

「長い時間を掛ければ減るでしょうが……ふむ。どうやら何処からか魔力の供給を受けているようですね」

「魔力の供給ですか?」

「ええ。もの凄く分かりにくいですが、対岸の方から魔力が送り込まれているようですね。供給元はその更に奥……ああ、何となく分かりました」

「そうなのですか?」

 女性は一人納得すると、呆れたように小さく息を吐いた。

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