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旅路11

 フォルトゥナに女性の調査が終わったら起こしてくれと頼むと、座ったまま軽く眠る。

 体勢もだが、岩場の上という事であまり寝心地は良くない。それでも僅かでも睡眠を取っておきたいと思ったので、背に腹は代えられない。

 しばらくそうして浅い睡眠を取ったところで、フォルトゥナがヒヅキを起こす。

 ヒヅキは目を覚ますと、周囲を見回す。眠った後の調査にはそんなに時間が掛からなかったらしい。

『ありがとうフォルトゥナ』

『この程度、いつでもお申し付けください』

 礼を言うと嬉しそうにそう返してきたフォルトゥナにヒヅキは軽く頷いた後、女性の方へと視線を向ける。

 調査を終えたらしい女性は、顎に手を当てて何やら思案している様子。少しすると顔だけで周囲を見回した後、ヒヅキ達の方に振り向く。

「どうやらここではなかったようですね」

「そうなのですか?」

「ええ。それっぽく偽装してあっただけのようです。まぁ念の為に確認に来ただけで、最初からこの場所には期待はしていませんでしたが」

「そうだったのですか」

「本命の可能性が高い候補は3ヵ所あるのですが、何処も遠いので困りものです」

 ヒヅキが立ち上がると、近づいてきた女性は困ったように小さく息を吐き出す。女性の距離感は一般的なそれとは乖離しているので、女性の言う遠いとは、ヒヅキにとってはかなり遠いのだろう。

 なので近場からといいう事。しかし本命ではないので、候補潰しの為の確認という意味合いが強い。

 女性も元々ここは違うだろうと推測していたから、その表情は残念というよりも面倒といった感じであった。

「さて、ここでの用事も済みましたし、先に進みましょうか」

 その言葉にヒヅキが頷くと、女性は英雄達の方に近づき、移動を再開させる旨を告げる。

 直ぐに全員の準備が整うと、一行は移動を開始する。急な傾斜を回るように進んでいるのは変わっていない。

 ついてくる英雄達の様子を確認しながら、森の中よりも速い速度で進んでいく。不調だった英雄達の様子も大分よくなってきたので、休憩する時さえ見誤らなければ、移動速度に関してはそれほど気にしなくても問題なさそうだった。

 道が急な斜面の部分を回り込む形でおおよそ半周すると、視界の悪い山道でも山の向こう側の景色が見えてくる。

「これは……」

 そこは一面緑色の場所。しかし、その緑は草ではなく木の緑。まるで一面覆う巨大な絨毯のように密集した木々の様子は、森というよりも密林だろうか。上からでは地面の様子は窺い知れない。

 離れた場所に山から流れている河を見つけたが、分かるのはそれぐらいだ。

「ここを通るのですか?」

 その光景に遠慮したい気持ちが浮かび、ヒヅキはつい女性にそんな事を問い掛けてしまう。前回の森でも面倒だったというのに。

「ええ。と言いましても、あまり奥には進まずに、外縁部に沿うようにして進みますのでご心配なく」

「そうですか」

 それが安全なのかどうかはヒヅキには何とも言えないが、それでも密林の中に入るよりかはマシなのだろう。そう判断し、ヒヅキは頷く。密林は山裾から広がっているので、ここまでくれば密林に関わらないなどという選択肢は存在していないのだから。

 程なくして、ヒヅキ達は山を下りていく。視界の先には広がる密林。木々の合間から奥の様子など見渡せないほどに深く、近づくにつれ湿度が上がってくる。

 ヒヅキは腕に嵌めている魔法道具により魔力を与え、風の結界を強化する。あまり強すぎても音が聞こえなくなるので、その辺りの兼ね合いを探るのが難しい。

 それから少しして、山から直ぐに密林へと景色が変わった。ただ、女性が事前に言っていたようにあまり奥までは進まないらしく、女性は直ぐに直角に曲がり、山と並行になるように密林の浅い部分を進みだした。

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