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小休止13

 部屋に戻ったヒヅキは、ベッドの上で横になる。

 そのまま、舌に残っていた辛さが引いてきた辺りで、待望の睡魔に襲われた。

 その睡魔に身を任せて眠りについたヒヅキが目を覚ましたのは、扉を軽く叩く音が聞こえたからだった。

「は、はい?」

 まだ僅かに眠気の残る頭で返事をすると、扉越しに、少し前に聞いたばかりの若い女性の声で、夕食の準備が整った事が伝えられる。

「分かりました。直ぐに行きます」

 ヒヅキはそう返しながらベッドから降りると、簡単に身だしなみを整えてから扉を開けた。

 扉の先で待機していたのは、やはり明るい緑髪を頭の両端で結んだ、まだあどけなさの残る少女であった。

「お待たせしました」

 ヒヅキがこの家の使用人である少女にそう言葉を掛けると、少女は「それではご案内致します」 と言って頭を下げてから、先行する。

 ヒヅキは流石に食堂までの道は覚えていたが、これがこの家のやり方だと、大人しく少女の後に付いていく。

 しばらくの間、歩いていても全く揺れない頭を視界に収めながら、ヒヅキが黙って少女の後に続いて歩くと、食堂に到着した。

「それでは、ごゆっくりお寛ぎくださいませ」

 食堂の入り口で少女と別れる。いつも案内される席の傍には、赤茶色の髪を頭の上で一塊に纏めている使用人の女性が立っていて、ヒヅキが近づくと、椅子を引いてくれた。

「ありがとうございます」

 ヒヅキも慣れたもので、礼を言って引かれた椅子にゆっくりと腰掛ける。

 腰を落ち着けてから食堂内を見回すも、シロッカスとアイリスの姿は何処にも無く、使用人もヒヅキを先導した少女が入り口近くに立っている以外には、椅子を引いてくれた女性がヒヅキの後方で待機しているのみであった。

「シロッカスさんとアイリスさんは?」

 ヒヅキは首を回すと、後方で待機している女性に問い掛ける。

「旦那様とお嬢様でしたら、もうじきいらっしゃる頃かと存じますので、もうしばらくお待ちください」

 そう告げて女性は軽く一礼すると、頭を上げた後に、僅かにずれた眼鏡の縁を片手で持ち上げて直す。

「そうですか。ありがとうございます」

 首肯して礼を告げると、ヒヅキは顔の向きを正面に戻す。

 静寂が形を成して見えそうな程に静かな空間で、ヒヅキはふと、今日はシロッカスが護衛の仕事仲間を探しに出た事を思い出し、見つかったのだろうかと少しだけ心配になった。

 急ぎではないと言っていたが、そういつまでものんびりもしていられないだろうから。

(次は何処に行くんだろうか?)

 ヒヅキにとって、シロッカスの依頼はちょうどよいカーディニア王国巡りとなっていた。名物の観光こそ出来ないが、ガイドと食事付きで街道を観察しながら進めるうえに、途中で物資補給で村や街にも寄るので、ある意味観光だった。

 そのうえ、ガーデンに帰るとお金まで貰えるのだ、実に素晴らしい仕事であった。

(スキアや賊にもほとんど遭遇しなかったし)

 だからといって油断は出来ないが、それでも今なら気楽に警護が出来た。

(シラユリさんには礼を言わないとな)

 そう思い至り、時間があれば明日にでも会いに行こうかと、頭の中でヒヅキは予定を組む。ギルドの場所は帰り際にシラユリから教えて貰っていた。

 ヒヅキがそこまで考えていたところで食堂の扉が静かに開かれ、シンビに先導されたシロッカスとアイリスが食堂内に入ってきたのだった。

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