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旅路6

 ヒヅキ達が警戒する中、光は次第に膨れ上がる。それからは一瞬の出来事であった。

 光の範囲が急速に拡大したかと思うと、ヒヅキ達の視界を白く染め上げると共に、パリンという何かの割れる甲高い音が周囲に薄く響く。

 その音と、女性の「ああ、思い出しました」 という言葉がほぼ同時にヒヅキの耳に入った。

 何を思い出したのか。ヒヅキがそれについて疑問を抱くも、しかし直ぐにそれは霧散してしまう。というのも、視界が戻って直ぐに視界に映ったのは、もの凄い速さでヒヅキ目掛けて飛び込んでくる何者かだったのだから。

「ッ!?」

 咄嗟に避けようとしたヒヅキだが、相手の方が速く、また気がつくのが遅かったせいで反応が遅れてしまう。

 思わず回避を選んでしまったので、光の剣の現出も遅れる。なので、ヒヅキは身体に力を入れて相手の突撃を受け止める事ぐらいしか出来なかった。

『ヒヅキ様!!!』

 ヒヅキが覚悟を決め、相手がぶつかった衝撃が身体に走ると同時に、頭の中にそんな声が流れ込んでくる。聞き覚えのある女性の声に、ヒヅキは抱き着いてきた相手に視線を向ける。

 視界に映るのは、光の加減で金にも銀にも見える髪。

 身長も高いらしく、飛びついたままにヒヅキの胸元に顔をうずめていながらも、相手はやや足を拡げ、少し背を丸めるようにしている。

 薄汚れた青緑色の衣服に身を包み、露出している足の方は汚れが目立つも、それでも元々の肌が白いというのは分かった。

 そんな相手の中で最も特徴的な部分は、髪の隙間から姿の覗かせている尖った耳だろう。つまりはエルフという種族の特徴。

 先程の女性の声と併せて考えれば、該当する人物は一人しか居ない。何故ここに居るのか気にはなるが、とりあえず予想が合っているのかどうか確かめる為に声を掛けることにした。

『フォルトゥナ?』

 ヒヅキのその呼びかけに、女性は顔を胸元に押しつけたまま顔を上げると、泣きそうな、それでいて安堵したような顔をした後にまた胸元に顔をうずめた。

『やっとお会い出来ました』

 遠話ではあるが、僅かに震える声音を出すフォルトゥナ。

『どうして、いやどうやってここに?』

 フォルトゥナはドワーフの国に置いてきたはずであった。そして、ドワーフの国から現在の場所まではかなりの距離がある。

 仮にあれが転移魔法であったとしても、エルフの国から出た事がなかったであろうフォルトゥナが、ヒヅキでも初めて訪れたこの場所に来た事があるとは到底思えなかったのだ。転移魔法は、転移先の場所を知っていなければ上手く行使出来ない。例外があるとすれば、それは転移魔法陣だろうか。転移魔法陣であれば、設置さえしていれば2点間を移動出来る。

 ヒヅキは光っていた場所に視線を向けてみる。しかし、そこには岩があるだけで、もう先程の光さえない。

(もしもあれが転移魔法陣であった場合、元々俺ではほとんど見えはしないが……しかし、仮に転移魔法陣の片割れがここに在ったとしても、こんな場所に在る理由が分からない)

 現在地は何も無い山の中腹である。近くに集落や何かしらの施設は確認出来ない。心当たりは、近くに在ると思われるあの覗いていた者が属していた集落ぐらい。それとも、昔にはこの辺りにも何かが在って、転移魔法陣はその名残なのかもしれないとも考えられるか。

 いずれにしても、この周辺の知識が全く無いヒヅキでは、いくら考えても答えは出せないだろう。ならば、色々考えずにフォルトゥナの答えを待った方がいい。

 しかし、ヒヅキの問いにフォルトゥナは不機嫌そうに抱き着いている腕の力を強める。

『どうかした?』

 その意味が分からず、ヒヅキは不思議そうに問い掛けた。

 少しして、フォルトゥナは僅かに顔を上げて目だけをヒヅキに向ける。それはジト目とでも言えばいいのか、何処か恨みがましいようなその視線に、ヒヅキは益々訳が分からないという風に首を傾げる。

 それを確認したフォルトゥナは、表情を隠すように顔を戻すと、困ったように小さく息を吐き出した。

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