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旅路3

「ん?」

 その人影のような方へとヒヅキは意識を集中させる。こんな場所に誰かいるとも思えないので、見間違いか、もしくは何かしらの動物かもしれないが。

「…………んー?」

 しかし、意識を集中してみてもそれが何かは分からない。分かった事は、そこに居るのがヒヅキの腰よりも少し高いぐらいの真っ黒い何かという事ぐらい。

 最初は木の裏にそういった見た目の植物でも生えているのだろうかと思ったのだが、ジッと見ていると微かに動いているのが分かった。

 もっとも、それだって最初は風に揺れているのだと思ったのだが、それにしては木の影から覗き込んでは引っ込むような揺れというのは違和感があった。それに、よく見れば周囲の草木は揺れていない。

 もしもその真っ黒い何かが人だとすると、こちらを覗いているという事になるのだろう。しかし、全身真っ黒という種族はヒヅキの記憶にはなかった。

(……仮にあれが人だとして見てみると、あの黒いのは見た感じ毛か? いやでも、全身毛だらけなうえに黒一色になるほどの剛毛というのは存在するのだろうか?)

 どうなのかと首を傾げたヒヅキに、隣まで来たクロスが話しかけてくる。

「どうかなさいましたか?」

 クロスの問いに、ヒヅキは一瞬視線をそちらに向けた後、視線でその木を指し示す。

「あの木の裏に人影のようなモノが見えたので、それが何かと思いまして」

「人影? ふむ」

 クロスはヒヅキの視線を追うように木々の生い茂る方へと視線を向ける。それからしばし人影を探して、視線を木々の中で動かしていく。

「ああ、あの黒いやつですか?」

「そうです」

 それを見つけたクロスの確認の問いに、ヒヅキは頷いて肯定する。

 ヒヅキが肯定した後、クロスはうーんと腕を組んで首を傾げながら思案していく。それも程なくして腕を解いた。

「私の記憶が確かならば、あれは小人の一種だった覚えがありますね」

「小人ですか?」

「はい。もしそうならば、まだ生き残っていたという事に驚きですが」

「どんな特徴が?」

「見た目ですと、小人の1種なので背丈が低いです。と言いましても、一口に小人と言っても、小さいとほんの数センチメートルほどの小人も存在しますので、あの種は小人の中では背が高い方です。それでも大人で背丈が1メートル前後ぐらいで、1メートル20センチメートルもあればかなり背の高い部類に入るでしょうが。なので、私達のような存在は、その小人にとっては巨人と大差ないのでしょう。他にも、その種族は男女ともに全身を黒く柔らかな体毛に覆われているので、見た目は歩く黒い毛玉といった感じですかね」

「なるほど。では、あの黒いのがそれだと?」

「あくまで私の記憶にある範囲での推測ですので、私の記憶にない種族という可能性もあるでしょう」

「なるほど。ありがとうございます」

「お役に立てたのであれば光栄です。ああ、もしその種族であった場合、外見ではなく種族としての傾向としましては臆病なので、ああやって見ている事はありますが、見ているだけなので害はありませんよ」

「なるほど」

 クロスの説明にヒヅキは頷く。

 確かに相手から悪意とか敵意とかそういった負の感じはしない。見ていた感じだと、偶然こちらを発見したので様子を見ているだけといった感じに思えた。偵察しているにしては動きが稚拙すぎるのだから。

 であれば、気にする必要はないのだろう。だが、クロスもあくまでと言っていたので、たまたまクロスの知っている種族に特徴が似ているだけの別物という可能性もあるので、ヒヅキは女性に確認だけしておいた方がいいかと思った。話を聞くだけなら大した手間ではない。

 そう思ったところで、ヒヅキは早速女性の許に移動する。休憩時間もそれほど長くはないのだから。

「すみません。尋ねたいことがあるのですが」

「何でしょうか?」

 英雄達と少し距離を置いた場所で一人で休憩していた女性に、ヒヅキはそう声を掛ける。

 それに女性が反応したところで、先程の黒い何かについて説明していく。ついでにクロスから聞いた話も併せて説明した。

 ヒヅキの説明を聞き終えた女性は、そのまま木々が生い茂る方へと視線を向ける。現在位置からでは他の木が邪魔で黒い何かは視認出来ないはずだが、女性はしばらく木々が生い茂る方を眺めた後、ヒヅキの方へと顔を戻した。

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