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偽りの器42

 一通り岩の観察を終えたクロスは、女性の隣に移動する。

「もういいので?」

「はい。この岩が普通の岩ではないのは分かりましたから」

「そうですか。まぁ、普通の岩を転移石にしようとは思いませんからね」

「普通の岩では陣を刻むことがそもそも難しいですからね。上手くいってもかなりの短距離で終わる事でしょう」

「魔力回路の構築に魔力の集積。どちらにも不向きですからしょうがないのですが」

「そうですね、何事にも向き不向きというものがあるものです。その点、この岩は魔石に近い何か、といったところでしょうか。成り立ちは魔石に近いようですが」

「何かが固まって出来たか、岩を変質させたか、という事ですか」

「そうなりますね」

 魔石というのは魔力が凝集して完成する物と、一般的に宝石と呼ばれる鉱物が濃い魔力に当てられて変質した物の2種類がある。

 前者の魔石は魔力そのものなので、蓄えられている魔力の純度が非常に高い。ただし、簡単に出来る物ではないので希少性も極めて高い。

 後者の魔石も希少ではあるが、前者の魔石ほどではない。こちらは元が鉱物なだけに純度も前者に劣る。それに加えて品質のばらつきが大きく、粒が大きく輝きが奇麗だからと言って魔石として優秀とは限らない。

 クロスの見立てでは、この転移の起点となっている岩はその魔石と似た成り立ちで出来た物なのだろうというモノであった。おそらく成り立ちの魔力の部分を別の何かに替えればこの岩が出来るのだろう。まぁ、魔石と考えてもかなりの大物ではあるが。

「調べ終わったのでしたら、先へ進みましょうか」

「そうですね。さっさと破壊対象の確認を済ませてましょう」

 女性の言葉にクロスが頷くと、直ぐに女性は岩に触れて転移する。クロスもその後に続いて転移した。

 二人が転移した先は、相変わらずの暗黒世界。ヒヅキでは眼前に持ってきた自身の手すら視認出来ないほどなのだが、女性はそんな中でも危なげなく歩いていく。

「………………」

 そんな女性とは違い、初めて転移してきたクロスは、転移したままの場所で興味深げに周囲に視線を向ける。

「どうしました? 偽りの器はもう少し先に在りますよ?」

「いや、まだこんな場所が在ったのだなと思いましてね」

「ふむ? ああ、そういえば昔はこんな世界だったのでしたか」

「こんな世界も在った、というのが正しいですがね」

「そうですか」

 立ち止まって振り返った女性の言葉に、クロスは懐かしげにそう答える。どうやら女性同様に暗黒世界でも視界を確保出来ているようだ。

「それにしても、源素が満ちている場所とは……ここは何処なのでしょうね」

「世界の中心では?」

「なるほど。その可能性もありそうですね」

「しかし、源素ですか。魔素ではなく?」

「そう呼んだ時代もありましたが、元々は源素でしたね。魔法だって、神法など別の名で呼んでいた時代もあったほどですから」

「なるほど」

「ま、基本的な部分は変わりませんが……とはいえ、魔力と源素は少し異なるのですが」

「そうですね。液体と固体ぐらいは違うかもしれませんね」

「源素の扱いを知らなければ、ここでは視界を確保する事も困難でしょう。ヒヅキ様はご存知だったので?」

「いえ。何も見えていなかったようですよ」

「そうですか……これから先、源素を扱うような事も無いでしょうが、それでも戻ったら扱いについてお教えした方がいいかもしれませんね」

「そうですね。ヒヅキであれば直ぐに会得出来るでしょう。何せ根源魔法が使えるのですから」

「根源魔法ですか。まぁ、呼び方は色々ですが、かなり珍しい魔法なのは変わりありませんね。何にせよ、それであれば使い方は直ぐに理解出来るでしょう。古の魔法、その中でも神の魔法と呼ばれた魔法の使い手であれば造作もないでしょう。もっとも、それを抜きにしてもヒヅキ様は稀有な存在ではありますが」

 歩き始めたクロスは、直ぐに女性に追いつく。立ち止まっていた女性も、それを見て移動を再開した。

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