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偽りの器40

 というよりも、短剣を除けばヒヅキが現在持っている剣は1振りしかない。女性から預かっている色々と性能のおかしい長剣だ。文字通りに何でも斬る事が出来るその長剣は、破格とも言えるほどに優秀な剣であろう。

 声の主の言うところの優秀な剣がその長剣で間違いないのであれば、それにならば光の魔法を纏わせることが可能という事になる。

 ただでさえ強力な剣の性能が更に上がるというのは驚きだが、同時にヒヅキは内心で過剰すぎるほどに高性能な剣になるなと呆れてしまう。

 それに、何でも斬れる剣に魔法を上乗せして意味があるのだろうかと疑問にも思ってしまう。それが顔に出ていたのか、それとも心の声でも漏れていたのか、声の主がそれに応える。

『君が頭に思い浮かべたのが優秀な剣で間違いないだろう。それで、元々何でも斬れるほどに優秀な剣を魔法で覆っても意味があるのだろうかと疑問に思っただろうが、これが意味があるのだよ』

 勿体ぶるような声音でそう言った後、

『その剣は何でも斬れるが、だからといって何でも斬れる訳ではないのだよ』

 などと謎かけのような事を口にする。

 何でも斬れるというのは思い込みで、この世にはそれでも斬れないモノが存在するのだよ。という忠告のような意味だろうとはヒヅキも解るのだが、次元でさえ切り裂けるような剣で斬れないモノというのが何かと思わず首を捻ってしまう。

『この世には斬撃が効かないモノも存在するという事さ』

(はぁ)

 声の主の答えに、ヒヅキは気の無い返事をする。

 通常の武器で効かない相手として、ヒヅキは直ぐにスキアの存在を頭に思い浮かべるも、それでもヒヅキの持つ長剣であれば、スキアにでも攻撃が通るだろう。それぐらいに性能としておかしな長剣なのだから。

 しかし、それぐらい知っていそうな声の主が、それでもその長剣では効果の無い相手が居ると口にしている以上、もしかしたら本当にそういう存在が居るのかもしれない。

 そうは思うも、しかし斬撃が効かないのであれば、魔法を使えばいいとも思った。

 確かに武器に魔法を纏わせると、威力が上がるうえに纏わせた魔法の属性も付与された攻撃になるのだが、その属性でしか攻撃が通らないのであれば、別に武器での攻撃に拘る必要は何処にもない。ヒヅキは別に剣士という訳でもない訳だし。

『いや、魔法だけでは駄目、物理だけでは駄目という存在も居るからさ……』

 何やら困ったようにそう言うも、壁1枚隔てているような遠くに聞こえる声の為にあまりはっきりとは聞こえない。まぁ話の流れさえ解っていれば十分な話なので、そこまで興味も無いのだが。

 とりあえず、使うかどうかは別にして、ヒヅキは選択肢が増えたということにしておく。剣の素振りもこれからは行っていた方がいいかもしれない。

 そうヒヅキがこれからについて思案していると、世界の白さが増したのが分かった。声の主の声もかなり遠くになった気がする。

 そんな周囲の様子に、ヒヅキは少し考えて答えを出す。

(時間という事か)

 元々浅い眠りだったので、起きるのが早くてもしょうがないだろう。後は起きた時の周囲の状況次第だが、直ぐに動けるように構えていれば大丈夫かと、ヒヅキは楽天的に考えた。

 声の主はまだ伝え足りないのか、未だに何か言ってはいるものの、既に声の主の言葉はヒヅキの耳には届いていない。

 身体の芯から浮き上がるような浮遊感と共に、ヒヅキは目を覚ました。

 目を覚まして周囲に目を向けるも、まだ休憩中のようで、英雄達は変わらずそれぞれ思い思いに時を過ごしている。

 偽りの器の在る場所へと向かった女性たちはまだ帰ってきていないようで、姿は確認出来なかった。

 そうして周囲を確認してみるも、近くに誰か居るという様子でもないので、今回は単純に自然と目が覚めただけなのだろう。

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