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偽りの器39

『魔法の組み合わせといっても君はそう多くは修得していない……ああ、ここで言う魔法は光の魔法の事だよ』

 声の主は思い出したようにそう付け加える。現在ヒヅキが使える光の魔法は光の剣・魔砲のふたつである。光球は魔砲の一部であるし、治癒は分類が不明。過去視はおそらく別の系統だろう。なので、組み合わせるといってもひとつしかなかった。

『ああ、うん。君の言いたい事は分かるよ。選択肢が無いもんね』

 ヒヅキが何を思ったのか察したようで、声の主は苦笑するような声音を出すと、小さく『なはは』 と笑って話を続ける。

『まぁ、勿体ぶってもしょうがないから話すが、光の剣を魔砲の砲身の中に投げ入れると、効果範囲の狭い中・遠距離攻撃になるんだよ』

(それは……そうですね)

 声の主の言葉に、ヒヅキは頭の中で光の剣を砲身の中に投擲して攻撃する様子を思い描いてみる。そうすると、光の剣がもの凄い速度で弓矢のように対象へと真っ直ぐ飛んでいき、中った対象を貫通する様子が容易に想像出来た。

 光の剣は切れ味鋭い剣のような物なので、それを飛ばしたところで光球のように爆発する事はない。そうなると、光球の時同様に中・遠距離攻撃であるにもかかわらず、周囲への被害をあまり考えなくてよくなる。

 ただ、問題があるとすれば命中精度だろうか。砲身の加速でほぼ真っ直ぐ飛んでいくといっても、剣の幅程度しか攻撃範囲は無いので、対象がよほど大きくない限りは命中させるのが難しいかもしれない。

 光の剣自体は魔力が続く限り何本でも手元に出せるし、飛ばした後に消す事も出来る。なので弾数に関してはそこまで気にしなくてもいい。

 命中精度は何度も練習して慣れるしかないが、光球同様の曲射撃ちまで修得したいところ。いや、光球の場合は攻撃範囲が広すぎるので、そこまで狙いを定める必要はないのだが。

 ともかく、光球の時と比べると命中精度を上げないといけないのは確実だろう。その代り、隠密性は上昇する。もっとも、光の剣はその名の通りに光っているので、光球の時ほどではないにせよ目立ちはするが。

 それでも使いやすくはなったのだろう。光球だと周囲の被害を考慮して気軽に使えなかったので、今まで遺跡内などの狭い場所では使用出来なかった。

『威力の調整は君次第ではあるけれど、点の威力で言えば光球以上ではあるね』

(そうですね)

 光球での魔砲は面での制圧であり、広範囲爆撃が売りのようなものだ。今のヒヅキであれば、全力全開で文字通り全てを出し切って放てば、大国の首都ぐらいは消し飛ばせる範囲で爆発を起こせるだろう。

 それに比べて光の剣の場合は、貫通性に特化したようなものか。これで攻撃すれば狙いを絞れるうえに、攻撃後に対象の亡骸などを残しておける。

 良し悪しはあるも、それが出来るようになればヒヅキの攻撃の幅が増える事だろう。ただ、やはりもう少し手軽な中距離向きの攻撃が欲しいところだが。

 そんなことを考えながら、光の剣を砲身で飛ばすなど考えた事もなかったヒヅキが感心していると。

『まぁ、後は剣に光の魔法を纏わすというのも今の君なら出来るだろうね』

(剣に光の魔法を纏わすですか?)

 声の主の言葉に、ヒヅキは怪訝な表情で問い返す。依然として声が遠くに聞こえるので、聞き間違いだろうかと思ったほどだ。

 確かに他の一般的な魔法の中には、剣に炎や雷なんかを纏わせる方法が存在するが、まともに運用しようと思うと、それはかなり魔法に長けたうえに剣技も相当必要になってくる。

 しかしそれも当然の事だろう。

 例えば炎を剣に纏わせたとする。それは火力を調整しなければ剣の持ち主が黒焦げになるし、燃える剣が服に掠りでもするだけで大変な事になってしまうだろう。そう考えれば、魔法と剣技を高い水準で収めている必要があるのは容易に想像がつく。単純に魔法を纏わせるだけでいいのであれば、それはそこまで難しい方法ではない。

 それに剣を痛めてしまわないように気をつける必要もあるし、何より魔法を維持し続けなければならないので、結構魔力を消耗するのだ。そんな技を光の魔法で再現するとなると不安しかない。

『ああ。といっても、普通の剣では駄目だからね。幾ら君が細心の注意を払って剣と魔法を繊細に扱ったとしても、剣の方が耐えられるはずがない』

(では?)

『君はそこらの剣よりも遥かに優秀な剣を持っているだろう? それに纏わせればいいのさ。そうすれば光の剣を纏った剣になる。あれならば、余程大きな失敗をしない限りは使いこなせると思うが』

(優秀な剣?)

 はてとヒヅキは首を傾げるも、流石にそれは直ぐに分かった。

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