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偽りの器35

 ふむと少し考えたヒヅキだが、今は話し掛けられる雰囲気でもなかったので、諦めて今代の神が住まう世界への開通と同時に偽りの器を破壊する方法について思案してみる。

(道の場所がまだ判明していないので、両者の距離は不明。しかし、かなり離れている事が想定される。そのうえで、可能な限り同時に事が運べるようにするにはどうすればいいか……)

 その条件であれば、やはり真っ先に思い浮かぶのが女性が提示した方法だろうか。転移は当然として、長距離を一瞬で移動出来ないのであれば遠話は非常に有効な方法となるだろう。

 では他には? とヒヅキは思考を巡らせてみる。偽りの器が在った場所では妙に思考が鈍かったが、ここでならばあそこまで酷くはないだろう。力の濃度はあの地とは比べようもなく低いのだから。

 周囲に展開している魔砲の砲身も出力を下げている。それでも纏わりつくような不快感はかなり薄い。

 そうであれば、ヒヅキの思考が鈍かった原因と思われる力の濃度は正常とまでは言えないまでも大分低くなっているということだ。そんな場所であれば、ヒヅキも問題なく思考出来るようになるだろう。そう思い、何か思い浮かばないかと僅かに期待する。

「……………………うーん」

 ヒヅキは首を捻って小さく唸ると、考え込む。色々と考えが浮かぶも、何か形になる前に霧散してしまうようなものばかり。

 しばらくそうして考えていると。ふとある考えが浮かんできた。

(別に人が移動や会話をしなくてもいいような?)

 そう考えると、それに沿ったような考えが浮かんでくる。

(例えば、遠隔操作可能な魔法道具でも偽りの器に取り付けておいて、道を繋げたと同時に起動して爆破なり何なりすればどうだろうか?)

 ヒヅキは頭に浮かんだ案を、そのまま頭の中で検討してみる。悪く無いとは思うが、懸念も同時に浮かぶ。

(しっかりと起動するかどうかが問題か。それを確かめる為に誰かを置くとなると、結局は同じ事だな。絶対に起動するという前提の下に行動するならば意味があるだろうが、そんな危ない賭けは出来ないよな)

 今回の任務に失敗は許されない。失敗すればヒヅキ達の弱体化か、強いままの今代の神へと挑まなければならなくなる。そうなると、勝利は絶望的となるだろう。

 故に必ず成功させなければいけないのだが、遠隔操作で偽りの器を破壊するというのは少々不安が残ってしまう。近くに見張りを置くにしても、結局はその者と連絡を取り合わせばならないので、それであれば最初からその者が偽りの器を破壊すればいいだけである。

 という訳で先程の案を却下した後、では遠話可能な魔法道具は作れないのだろうかと考える。それが可能であれば、遠話という使い手を選ぶ魔法に頼らなくてもいいだろう。

 ヒヅキは記憶の中を探ってみるが、そういった類の魔法道具は聞いたことがなかった。エルフの場合は遠話が使えるし、人間の場合は早馬や煙を利用していた。もしかしたらヒヅキが知らないだけかもしれないが、知らないので知りようがない。

 そこでヒヅキは、女性に質問をしてみる事にする。英雄達の中にも質問している者は何人も居るので、おかしな事ではないだろう。

「あの」

「どうしましたか?」

 ヒヅキが少々遠慮がちに手を上げて声を掛けると、女性は優しげに微笑んでそれに応える。

 女性が応じたのを確認したヒヅキは、遠距離を会話出来る魔法道具が存在するのか尋ねてみた。

「私の記憶には該当しそうな物が無いのですが、距離が離れていても会話が出来る魔法道具は存在しますか?」

「それでしたら存在しますよ。ああですが、性能としてはそれほど高くはない魔法道具だったはずです」

「どの程度の性能なのでしょうか?」

「そうですね……一国の端から端まで声を届けるのも困難といったぐらいでしょうか」

「なるほど」

「途中に中継地点を設ければその分距離は延びますが、中継地点の数が増えれば増えただけ、届けられる声の品質が劣化してしまいますね」

「そうなのですか」

「ええ。なので運用方法としましては、出来るだけ中継器を置かずに、国の中央で情報を集めて各所に送るといった感じですかね。領土が大きくなると、情報の集積地がその分増えたりしますが」

「なるほど」

「なので、今回の場合は最終手段に等しいですね。戦力がそれほど充実している訳ではないですから」

「そうですね」

 その女性の説明に、ヒヅキは納得したと頷く。国のように決まった領土内で運用するというのであればまだしも、今回のように偽りの器と道の距離が不明な状況では使いづらい。英雄達を復活させたと言っても、そこまで人材が豊富という訳ではないのだから。

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