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偽りの器32

 そう結論付けたヒヅキは、大人しく器の方に視線を向ける。女性の張っている魔力の糸を視認する事は出来ないが、何となく器の方の力に、手を翳して光を遮ったような陰りと言うか揺らぎのようなモノを感じるので、何かしているのは間違いないだろう。

 後は偽りの器の強度が判明するまで大人しく待つしかない。脆いのであればいいのだがと思うが、急所とも言える場所だ、そんなはずもないだろう。

(………………いや、そうでもないのか?)

 ヒヅキは少し考えたところで、偽りの器の特性とでも言えばいいのか、厄介な点を思い出した。

(そもそも今ここで偽りの器を調べているのは、どのぐらいの力で壊せるのかもだが、偽りの器が壊れてしまうと本来の器との容量の差を強制的に徴収されてしまうから壊してしまわないようにというのもある)

 偽りの器が破損して本来の大きさに戻った時、力の上限も本来の量に戻ってしまう。その際、器が大きくなった際に増えた力を回収しようと世界の仕組みが働く。

 回収される力の優先は、その増えた力が使われた対象。それは今代の神が全て自身の強化に使用したので、本来であれば今代の神から力は奪われるはずである。のだが。

(今代の神が別世界に逃げて繋がりを絶っている為に、この世界との繋がりが無い。よって、世界は今代の神から力を徴集する事が出来ずに負債を周囲のモノへと押しつける)

 そうなると、今代の神は変わらないままで、ヒヅキ達だけが弱体化してしまう事になる。そうなってしまうと、もう万が一にも勝ち目がない。最悪それで全てを力に変換させられて消滅するという恐れすらあった。

 そういった特性を考えると、偽りの器は脆いという可能性もあるだろう。何かの拍子に壊れてくれた方が今代の神としては非常に都合がいいのだから。

 もっとも、かなり長い間壊れずにそこに在ることを考えると、多少は丈夫なのだろう。この周辺には何も無いし何も居ないが。

(脆ければ、脆いなりに何かしらすればいい。破壊が簡単になると前向きに考えればいいし)

 結局のところは女性の調査待ちなので、ヒヅキは暇な間、そうやって色々と適当な事を考えていく。

(女性の魔法で壊れなかったから、触れるだけで壊れるというほどではないようだ)

 まだ器を調べている女性を横目に、ヒヅキはそう思う。器自体がかなり巨大なので、調べるのも時間が掛かるのだろう。

(もしも偽りの力が今壊れた場合、この世界のどれぐらいが消滅するのだろうな)

 今代の神が本来持ち得なかった力の量というのは不明なので、その辺りはよく分かっていない。しかし、かなりの量だったのは何となく分かった。

(ん?)

 そこまで考えたところで、ヒヅキは何か引っ掛かるなと首を捻る。だが、直ぐに何が気になったのかは分からない。

(えっと……んー?)

 先程までの考えを何度も思い出しながら、自分は何に引っかかっているのかと首を傾げる事しばらく。あれやこれやと考えていたところで、不意に答えを閃く。

(ああ、そうか。偽りの器をここで破壊した場合、この世界と今代の神が居る世界が繋がっていないからこの世界から強制的に力を徴収する。というのが気になったのか。あれはあの声の主が言っていた忠告の内容そのままだが……うん。多分だが、今代の神が居る世界とこの世界は僅かだが繋がっていると思う。あの声の主の言葉を鵜呑みにし過ぎて思考していなかったな。それとも、女性が何も言わなかったから、これは俺の方が間違っているのかな?)

 どうだろうかと首を捻るも、それは調査が終わった後にでも女性に訊けばいいだろう。

(まぁいいか。とにかく、今代の神はどうやってかこちらの世界を覗いている。という事は、僅かでもこの世界と繋がっているという事になると思うのだが……)

 そう思い、それはどうだろうか? とヒヅキは内心で自問自答してみる。あながちおかしな疑問には思えないのだがと考えながら。

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