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偽りの器28

「……そうですね。そもそも何を持って器とするかですが」

 女性は思案げな声を出すが、器は膨大な力を蓄えておける場所というだけで、他にこれといった特徴も聞かない。それで視線の先の球体が膨大な力を蓄えていられるかどうかだが、見た限りは蓄えていられるのだろうと思えた。

「ふむ。やはりあれは器で間違いないでしょう。周囲に他に何も無いというのもありますが、膨大な力を蓄えておけそうなほどの受け皿のようですし、何よりあの球体の中にかなりの力を感じます」

「力……確かに、周囲の濃い力さえもかすみそうなほどの強大な力を感じますね」

 おそらく紫色の球体の中で仄かに光っているモノがその力なのだろう。光っている部分が器に残っている力の残量だとすると、感じる力の強大さの割にはそれほど多くはなさそうに思えた。

(まぁ、世界の様々なモノを創造した後の予備であろうし、そんなものなのだろう)

 そう思ったヒヅキは、そこは大して気にならない。むしろ、まだそれなりに残っている方が意外なぐらい。今代の神は根こそぎ持っていったという訳ではないようだ。

「ええ。あれが世界の素です。と言いましても、私も見るのは初めてですが」

 お道化るように肩を竦めると、女性はヒヅキの腕を引いたまま器の周囲を移動するように歩く。

「ヒヅキの話では、今代の神への道を繋げた後にあの器を破壊すればいいという事でしたよね?」

「はい。本来の器は破壊されないらしいので、遠慮なく攻撃しても大丈夫かと」

「そうですか。それで今代の神が弱体化するのでしたら、試さない手はないですね」

 感心したような声音でそう口にした後、女性は「しかし」 と眉根を寄せる。

「あれはどうやれば破壊出来るのでしょうか? 普通に攻撃すれば破壊可能なのかどうか」

 悩みながら器の周囲を移動していく女性。だが、器自体がとんでもなく大きいので、少し移動したぐらいでは見えている面は大して変わらない。

「破壊もどの程度破壊すればいいのか。完全にとなると大変そうですね」

 ヒヅキが見る限り、器は何処も似たような感じで、場所によって強度に偏りがあるようには見えない。

「それに、今代の神への道を繋げた状態で、というのも方法を考えなければなりませんし」

 思考を巡らせながら、考えを纏めるように呟く女性。その女性に腕を引かれながら、ヒヅキも器の周囲を歩いていく。考え事をしているせいか、その移動速度は先程までと違って通常通りの速度な為に、暗い中の移動にも慣れてきたとはいえ、気を抜けばヒヅキは自分の足で自分の足を引っかけそうになってしまう。幸いなのは、歩いている場所が小石ひとつないほどに何処までも続く平地のようなので、ヒヅキは自身の足の動きだけに集中すればよかった事か。

 それからしばらく歩いたが、ヒヅキには器も自分達と一緒になって回っているのではないかと思えるほどに変化が見られない。あれを見て弱点が分かるとは到底思えないが、ヒヅキと女性ではその辺りを調べる性能がまるきり異なるので、ヒヅキが分からないからといって女性が分からない訳ではない。逆はあるのだが。

 なので、しばらくは歩きながら器を観察していたヒヅキも、変わり映えの無さに少し飽きてきていた。器以外は変わらず暗黒というのも関係しているだろう。器は光っているが、ヒヅキが周囲に展開している砲身同様にそれは周囲を照らさないらしい。

 かといって、調査は女性だけに全て任せる訳にもいかない。ここで置いていかれると、困るのはヒヅキの方なのだから。いやまぁ、調査自体は全て女性任せではあるが。

 太陽が無いので時間の感覚が無いのだが、それでも結構な時間歩き回ったと思う。その証拠という訳ではないが、ヒヅキは少し空腹を覚える。

 空いている手を背嚢の中に入れ、こんな時の為に浅い部分に収納している干し肉入りの小袋を手探りで取り出す。

 干し肉を小袋から取り出すと、それを噛み締めながら女性に続く。

 そうしていつまで移動するのかとヒヅキが考えたところで、突然女性が立ち止まった。

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