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偽りの器25

 その岩は、外見上はただの岩だ。苔生しているとか、蔦に覆われているということはない。不自然な点と言えば、森の奥地に在るというのにその妙に奇麗な外観ぐらいか。

 他はどれだけ見てもただの岩だ。この気持ちの悪い感覚さえなければ大して気にも留めないだろうほどに。

「この岩に触れればいいのでしょうか?」

 何か仕掛けがあるようにも見えないので、何かしら魔法でも掛かっているのだろう。そうであればヒヅキには解らない。

「そうですね……」

 ヒヅキの問いに、女性は岩をジッと見詰めて思案する。何かを探っているようなので、ヒヅキは大人しく女性の返答を待った。

 しばらくして何か分かったのか、女性は視線をヒヅキの方へと向ける。

「おそらくですが、それは転移のようなモノが施されているのではないかと思いますので、ヒヅキの言う通りに触れればいいのでしょう。ただし、何処へと続いているのかは不明ですが」

「なるほど。それは迂闊に触れられませんね」

「ええ。とはいえ、おそらくこの先が器へと続いているのでしょうから、このまま放置も出来ませんが」

「まぁ、それは確かにそうですが」

 周囲の力の濃度は高い。それは岩周辺だけではなく、もう少し奥の方も同様だ。なので、ここが器へと続く道だとは限らないが、それでもこの岩が力を放出しているのは間違いない。ということは、全くの無関係とも言い切れなかった。

 結局、考えたところで触れるという選択以外に無いのが分かる。もう少し時間があれば別なのだろうが、今は英雄達を待たせているし、いつ神の気が変わるとも知れない。それに何よりも、現在の行動を神が見ていないとは言い切れないだろう。既に捕捉されていた訳であるし。

 そういった訳で、やるならさっさと済ませたかった。仮に神が見ていても邪魔はされないだろうが。

 女性はそれから少し岩を観察した後、先に転移してみる事をヒヅキに告げた。その後に少し待っているように言葉を残して岩へと触れる。

 岩に触れると、女性は一瞬にして姿を消す。何処かへと転移したのだろう。

(まぁ、女性自身も転移が使用出来るし、仮に転移先が過酷な環境でも問題ないだろうからな)

 女性は食事も睡眠も必要ないし、疲労も無いという。最近女性に聞いた話だと、そもそも呼吸すら必要ないのだとか。

 今は言葉を発する為に呼吸しているだけだというが、言葉を発するのさえ声を出さなくても出来るらしいので、呼吸するのは癖のようなものというのが1番の理由だと言っていた。なので、おそらく遥か昔は普通に生きていた人物なのだろう。

 そういった話を聞いていたので、ヒヅキは女性を既に意志を持って動き回る人形のようなモノだと認識していた。という訳で、女性が先行しても気にしない。

 ただ、この岩の転移魔法に回数制限がなければいいがという懸念はあるが、転移前に女性が調べていたのでその辺りは問題ないのだろう。

 しばらくの間ヒヅキは周囲を見回したりしながら、岩から少し離れた木にもたれて待機する。魔法の練習でもしようかと思ったのだが、不快感が強すぎて集中出来なさそうなのでやめておいた。

 そうして待機していると、女性が帰ってくる。見た目は行きと変わらないので、特に何もなかったのだろう。

 女性が戻ったので、ヒヅキは女性の許に移動する。

「転移先はどんな場所でしたか?」

 数歩前で立ち止まると、ヒヅキは女性に質問する。これから行く場所なので、少しぐらい知っていた方がいいだろうと思い。

「……真っ暗な場所でしたね。それと、ここ以上に力の濃度が高いので、気をつけなければなりませんが」

「なるほど」

 一瞬考えた後で女性が告げた情報にヒヅキは頷くと、事前に砲身の出力を更に上げておく。

 そうして準備が整ったところで、「行きましょう」 と女性が確認を籠めた言葉を告げてきたので、ヒヅキはそれに問題ないと頷き、女性に続いて岩に触れて転移した。

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