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偽りの器16

 夜になりしばらく進んだところで、女性が一行に休憩を告げる。その際に今回は少し長めに休憩を取る事も伝えられた。

 未だに森の終わりは見えてこないが、今はそれよりもさっさと寝てしまおうと思い、ヒヅキは周囲を見回して寝るのに手頃そうな場所を探す。

 そうして見回したところで、木の根が地面の上にとび出している木を見つける。

 その根はおあつらえ向きに幹のすぐ傍に丁度人一人が間に座れそうな間隔で2本とび出ていて、それを見てヒヅキは寝るのに最適そうだと思いそこに移動すると、地面に防水布を敷いて木の根の間に腰を下ろす。

 その場所は木の幹が近いので、背中を幹に預けることが出来る。地面の上にとび出ている木の根も手を置くのに丁度いい高さだ。

 そうして木の根の間に腰を落ち着けたヒヅキは、早速眠る事にする。

 移動により多少眠気が覚めてしまっていたが、それでも静かな森の中で目を瞑っていると、気づけばすとんと眠りに落ちていた。





 声が聞こえた気がしたヒヅキは、目を開けて周囲に目を向ける。

(ああ、ここは……また随分と久しぶりだな)

 そうして周囲を確認すると、そこは真っ暗ながらも、自身だけは光っているのか視認出来るという不思議な空間であった。

 その空間に見覚えがあったヒヅキは、慌てる事なく現状を理解する。

(それで? そこに居るので?)

 そこは夢の中、というのとは違うのかもしれないが、ヒヅキはそういうモノだと認識していた。そして、ここにやってきた時には大抵何者かの存在が居る。最近はそれも一人だが。いや、違ったのは最初だけか。それも本当に違ったのか怪しいところではあるが。

『……相変わらずだね、君は。そう慣れてもらっても困るのだけれどもね。まぁいいか』

 何処からともなく響く男の声。頭の中に直接響くようでもあるし、幾重にも反響しているかのようにも聞こえる。

 そんな声だが、何故だか結構ハッキリと何を言っているのかが解る。そして、呆れているのだろうというのがヒヅキにも解った。もっとも、解ったからといって何するでもないのだが。

『久しぶりだね、元気にしてた?』

 まるで友達にでも声を掛けるような馴れ馴れしさの声の主。ヒヅキは相手の事をよく知らないので、そこは気にしないことにしている。

(まぁ、ほどほどに。それで、今日はどうされたので?)

 それなりに丁寧に接しながらも、ヒヅキは何処か投げやりな感じで問い掛ける。助けてもらったことはあるが、出てきてほしい時には出てこないので。

『いやなに、君が色々と外に出してくれたので楽になったからお礼をと思って』

(別に貴方の為ではありませんが)

『はは、まぁね。でも、これで少しはやりやすくなったのでは?』

(やりやすく、ですか。まぁ、魔法は使いやすくなりましたが)

『重畳重畳。君はまだ成長出来るからね、これからも精進していくといい』

(そうですか。……ああ、そうだ。ご存知なら教えてほしいのですが――)

 そこでヒヅキは思い出して、光の環の強化について問い掛けてみる。この声の主であれば、何か知っているだろうと確信があった。そして、それは正しかったようで。

『それは余計なモノがなくなった結果だね。あれらを抑えていた分をそちらに回せているから、基の値が増加したのだろうさ』

(基の値ですか?)

『そうそう。基礎部分が強くなったから、全体の底上げが成されたということだよ』

(ふむ。なるほど)

 つまり、英雄の数が減った事で、その英雄からの干渉を防いでいた部分の力が光の環の強化へと回された、という事だろう。色々細かな部分では疑問が生じるが、これで一応疑問は解けたという事になるだろう。

(それは貴方が?)

『全部じゃないけどね』

(そうですか)

 声の主の返答に頷いたところで、ヒヅキは何となく、神殿で神に遭遇した時に言われて気になっていた言葉を、声の主に問い掛けていた。

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