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偽りの器10

 放った水球は、木にぶつかり弾ける。

「………………」

 特に木が揺れるとかもなく、ぺちゃっというごく小さな水音だけが衝突した際に鳴っただけ。おそらく、手についた水滴を払って飛ばすよりは多少威力があるのではないか、程度だったと思う。あまりにも威力がなさ過ぎて逆に困るほど。子どもどころか赤子に中っても安全な気さえするほど。

 そんな微力な水球だが、砲身を介するだけで木を複数貫通可能なまでに強化される。それだけでもかなりの強化であった。問題があるとすれば、魔法の威力を上げても同じぐらいに強化されるのかどうか。いや、それ以前に。

(ここまで強化されていたか? 以前までは光球でもここまで強くなっていなかったと思うが……)

 以前まで光球を強化して使用していた時には、光の環はもっと輝いていたうえに何段も重なっていた。それでも、手を振って水滴を飛ばしたより多少マシかも程度の威力の魔法を木を複数貫通させるまでに強化させるほどの強化は出来なかった。そう、ヒヅキは記憶している。

 だというのに、今目の前で出た結果はそれを完全に否定していた。

(どういう事だ?)

 その結果に、ヒヅキは首を捻る。しかし、今はもう時間が無いので、それ以上の検証は出来そうもない。

 このまま検証を続けたい気持ちをぐっと堪えて、ヒヅキは呼びに来たクロスと共に休憩場所まで移動していく。

 その道中、ヒヅキは可能性を幾つか頭の中に思い浮かべていくも、結局のところひとつしか心当たりはなかった。

(英雄達を取り出した影響? しかし、普通は逆では……もしかして、光魔法にも干渉をしていたのか? いやしかし、光魔法には干渉していないと聞いたような……)

 うーんと考えるヒヅキ。もしかしたらその情報が間違っているのかもしれないし、ヒヅキが考えているのとはまた違った要因があるのかもしれない。

 なんにせよ、光の魔法が強くなった可能性が高い。それともより効率的になったのだろうか。もしかしたら砲身だけ何かしらの変化があったという可能性もあるが。

(うーん。もう少し検証してみたいが、今は無理か)

 そろそろ休憩場所に到着するので、ヒヅキは次の休憩の時にでも検証出来ればと考え、水筒に入れていた魔力水飲む。

 水筒を腰に戻したところで、休憩場所に到着した。

 休憩場所では既に隊列が組まれていて、ヒヅキの到着と共に移動が開始される。

 森の中を迷いなく進む女性の後に続きながら、ヒヅキは自分の周囲に展開している砲身へと視線を向けた。

 先程の結果があるからだろう、視線を向けた砲身が普段以上に輝いて見える。それ以外では、変化らしい変化は見られない。

(仮に砲身のみ強くなったとしても、砲身を介せば魔法が強化されるのであれば問題ないか。光の魔法以外でも砲身は使用出来るようだし)

 何故強くなったのか、何がどれだけ強くなったのか、そういった部分は不明なままながらも、砲身を介するとかなり強化されるという事だけは確実だろう。少なくとも水球に限って言えば。

 なので、もしも砲身のみ強化されたのだとしても、攻撃に関してはあまり問題はなかった。強いて言えば、狙いをつけるのが難しいという事か。しかしそれも、砲身の扱いに慣れれば問題はないだろう。

 そう考えれば、何がどうなっても悪くはなさそうだ。攻撃力が上がったのであれば、もしかしたら神にも少しは届くのかもしれない。そういう希望も抱けるというもの。

 そこまで考えたところで、ヒヅキははたと気づいた。

(もしも砲身が強くなったのだとしたら、水球であれならば光球はもっと強く?)

 水球で試したみたところ、威力は横に措くとしても、速度はまだ以前までの光球の方が速くなっていたような気がした。という事は、水球よりも砲身と同系統である光球の方が効率よく強化出来る可能性があるという事だろう。

 ただでさえ強力な光球である。それがあの水球以上の倍率で強化されるとなると、もしかしたらヒヅキが本気でやれば、世界のひとつくらいは吹き飛ばせるようになるのかもしれない。そんな事を冗談半分ながらもヒヅキは思ったのだった。

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