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偽りの器7

 未だに肉体に慣れていないらしいその姿に、果たして慣れる日が来るのだろうかと疑問に思う。さしもの英雄と言えども、生き返った経験はないのだろう。肉体も女性が用意した新しいものだし、それもしょうがないのかもしれないが。

(……そういえば、色々あって気にしていなかったが、あの肉体はどうやって用意したのだろうか?)

 それを思い出したヒヅキは、今更な疑問を抱く。女性であれば何でも出来る気がするが、それでも気にはなった。まぁ、知ったからどうなるというものでもないのだが。

(空間収納に入れていた? 不可能ではないが結構な数と量だし、何より何処であんなものの調達を?)

 空間収納に生きているモノを入れる事は出来ないと聞いている。ヒヅキは試したことがないので不可能ではないのかもしれないが、仮に出来たとしても非常に困難ではあろう。

 まぁ、英雄達の受け入れ先なので生きてはいなかっただろうが。それでもかなりの数だ、ヒヅキではどう頑張っても絶対に不可能な数ではあるが、女性ならば出来るのかもしれない。だが、肉体の調達先となると不明だ。ちょくちょく女性は単独行動していたので、もしかしたらその時にでも調達したのかもしれない。

(もっとも、受肉する前からあの見た目だったところから考えれば、こちら側に実際の肉体を構築したのだろう…………そちらの方がとんでもないがな)

 おそらくそれが正解なのだろう。しかし、その方が肉体を何処からか調達してきて中に魂を入れるよりもずっと高度な方法であろう。流石は英雄と言えばいいのか、それとも女性がとんでもないのか。

 考えたところでよく分からないので、そこで考えを打ち切る。今はそれよりも魔法の練習をする方が優先だった。

 ヒヅキは全員が休み始めたのを確認すると、女性の許まで移動する。

「珍しいですね。どうかされましたか?」

 近づいてきたヒヅキに、女性は軽く驚いたような口調で問い掛けた。

「実は、少し魔法の練習をしたいと思いまして。それで、休憩の間少し離れた場所に行ってもいいでしょうか?」

 ヒヅキの話を聞いた女性は、1度英雄達の様子に視線を向ける。そうして全員の様子を確認した後で。

「そうですね、思いの外疲れている者が多いようですので、ここで少し長めの休憩を取るとしましょう。ですので、その間は各自自由行動という事でいいのではないでしょうか? 休憩が終わる頃には連絡しますので、あまり離れ過ぎないようにお願いします」

「ありがとうございます」

 女性の承諾に、ヒヅキは礼を言って森の中を一人で進む。

 現在は朝なので、森の中は明るい。足下もよく見えるので、転ぶ事はないだろう。

 小型の光の剣を現出させると、念の為に近くの木に目印として小さな傷を浅く付けておく。それを少し進む度に木の幹に刻んでおけば、帰りも迷う事はないだろう。休憩の終わりを伝えに来る際に分かりやすいようにと、木の幹に刻む傷は矢印の形にしておいた。

 そうして森の奥に進んだところで、少し木々の間隔が他より広い場所を見つける。広いと言っても、一人でその場で剣を振るのがやっとぐらいの広さで、朽ちた倒木が在ったりで足場はあまりよくない。

 それでも魔法を放つ程度であれば問題ないだろう。ヒヅキはそう判断すると、その少し開けた場所で魔法の練習をする事にした。

 中央辺りまで移動すると、まずは周囲を確認する。

 他よりも少し開けている場所だからか、他よりも少しだけ明るいような気がする。頭上を見ると、枝葉が繋がっていない部分があった。

 足下に視線を向けると、その辺りは若干草の生えている量が多い。それと高さも膝下辺りまで伸びている。他の場所の草が踝より少し高いぐらいの高さなのを思えば背が高い。

 数歩先には辛うじて木の形を保っている倒木。中身は朽ちてスカスカだ。そこには茸や苔が生している。

 そうして周囲の様子と少し異なっているとはいえ、至って普通の森の中といった感じ。

 見た限りではあるが、何かしらの魔法陣が仕掛けてあるとかもないようなので、魔法を使用しても問題なさそうだ。それでもまぁ、火魔法は止めておこうとヒヅキは思うのだった。いくら生木はそうそう燃えないとはいえ、倒木もあるのだから用心するに越した事はないだろう。

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