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偽りの器4

 ヒヅキが森の中に入った後、湿気を感じたのは数歩森の中に足を踏み入れてからであった。

 しかし、他の者達は何も感じた様子は見受けられなかったので、おそらくそれを感じたのはヒヅキだけだったのだろう。だからといって、気のせいとは限らない。

(この風の結界のように、何らかの方法で身を護っているという可能性は大いにあるからな)

 なにせ相手は英雄達である。ヒヅキは自身が出来る事は当然全て出来るだろうと思っているので、その可能性は大いにあるだろう。他の可能性としては、ヒヅキだけが感じられたという事だが。

(仮に気のせいではなく、他の者が誰も感じられないのに自分だけが感じられたのだとしたら、それはおそらく俺が弱いからだろうな)

 弱いから抵抗出来なかった。もしくは弱いから狙われた。そう考えたヒヅキは、その辺りが妥当だろうかと思う。気のせいとはどうしても思えなかった。

 では、次にこれは何かという部分だが。

(湿気という可能性はまだあるだろうが、流石にここまで来ればその可能性は低いだろう。では、何かしらの魔法だろうか? しかし、こんな纏わりつくような不快感があるだけの魔法に何の意味が?)

 何か身体に異常をきたしているだろうかと調べてみるも、これといった変化は感じられない。であれば、警告的な意味合いだろうか? そうヒヅキは考えた。

 そこまで考えたはいいが、では何について警告しているのかとなると分からない。普通に考えれば、状況的に森の中に入るなという事だろう。であれば、この森の中には何かが在るという事になる。

 そう思って周囲を見渡してみるも、明るく比較的視界が通る森の中だというのに、どれだけ見渡してみても何かある様子は無い。何処までも平穏な森が続くばかり。

 それに仮に何か在ったとしても、現在の面子では神の襲撃以外であれば何でも楽々対処可能だろう。そう思えば、考えるのが馬鹿らしく思えてきたほど。

 もっとも、思考しようとその思考を放棄しようとも、現在纏わりついている不快感は変わらないのだが。

 ヒヅキが何か対処法はないかと模索していると、女性が休憩を宣言する。それで各々近場の木なり根なりに腰を下ろしていく。

 それに倣ってヒヅキも近くの木に立ったまま背を預けると、息を吐いて少し力を抜いた。大分弱くなったとはいえ、依然として不快感が纏わりついている。これの正体については未だに不明なままだ。

 これは森を出るまでの辛抱なのだろうかと、ヒヅキは自身の腕に視線を落とす。不快感があるだけで見た目には何も変わったところはない。

 視線を落としながら、ヒヅキはうーんと思考してみる。気分的に腕をさすってみるが、その程度では何も変わらない。

 そうしてヒヅキが思案していると、覗き込むようにしてクロスが顔を見せる。

「どうかされましたか?」

 難しい顔をしていたヒヅキに、クロスは心配そうに問い掛ける。それに視線を向けたヒヅキは、一瞬思案して尋ねてみる事にした。見た目は10歳前後の少年だが、中身は英雄であるのだから何か知っているかもしれないと思って。

「実は――」

 そうして一通り謎の現象について説明すると、クロスはヒヅキの腕をジッと見詰めながら思案する。

「そうですね……おそらくですが、それは魔力が纏わりついているのではないかと」

「魔力がですか。何故でしょう?」

「何故かはわかりませんが、魔力についてそこまではっきりと解るのは、魔力に敏感なヒヅキ様ぐらいでしょうね。私では少し魔力が濃いかな? ぐらいの違和感しかありませんよ」

 申し訳なさそうな表情を浮かべたクロスに、ヒヅキは礼を言う。とりあえず不快感の正体が分かったので、少しは進展したと言えるだろうから。

 後はこの不快感を無くす方法を模索すればいい。原因についてはどうでもよかった。何かあっても対処は出来るだろう。

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