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偽りの器2

「それでは、ここから最も近い場所まではどれぐらい掛かりそうですか?」

 転移魔法が使えないのを理解したところで、ヒヅキは女性にそう問い掛ける。移動は徒歩になるだろうが、全員が優れた身体能力を有しているだろうから、移動時間は普通の旅の者よりは大幅に短くて済むだろう。

 ヒヅキにそう問われた女性は、1度英雄達の方に視線を向けた後、僅かに思案するように視線を動かす。

「そうですね……何事もなければ3日から5日もあれば到着すると思いますよ」

「3日から5日ですか。意外と掛かるのですね」

 ヒヅキは英雄達の実力を知らない。まだ移動しかしていないし、ただ漠然と強そうだ程度にしか感じていなかった。なので、どれぐらいの速度で移動可能かは推測でしか計れない。それに、個人と集団では速度も異なる。

(今までの移動で計るのは難しいからな)

 頂上の神殿から現在の崖下までの移動は、かなり余裕を持った速度であった。休憩も多めに入れていたのは、肉体を手に入れたばかりの英雄達を気遣ってだろう。実際、不調そうな者も確認出来る。

 なので、そんな移動を参考に考えても意味はない。とりあえずヒヅキは、参考になりそうなものはと考えた後、自身をこの集団の中でもっとも遅いと仮定して考えてみる。

「遠いですからね。それに、戦うのと移動ではまた違いますから」

 そうしてヒヅキが考えている間も話は進む。女性は英雄達の方にちらと視線を送った後、困ったように小さく笑う。

 その様子に、女性は既に全員の能力を把握しているのだろうかとヒヅキは思った。把握していてもおかしくはないだろうが。

「なるほど。では、移動しながら話し合うのはどうでしょうか。私はこれといった目的地もありませんから」

「そうですね。英雄達は神と戦えれば満足でしょうし、意見を訊くまでも無さそうですが」

 手振りで移動を示しながら、女性は皆を引き連れて歩き出す。ヒヅキも送れないように女性の後ろに付いた。

「そうなのですね」

「ええ。神憎しで付いてきていますから」

 英雄達が受肉を果たした後の光景を思い出して、ヒヅキは何とも言えない表情を浮かべる。確かに英雄達は神憎しなのかもしれないが、それを煽りに煽った前を歩く人物に、ヒヅキは口にする言葉が見当たらなかった。

 それでも、何はともあれ付いてくるというのであれば、まぁいいのだろう。ヒヅキにとっては英雄達の事情なぞどうだっていい事なので、酷いものだと思いつつもそれを口にはしなかった。

 崖下から移動して歩いていく。現在地が何処なのかも、向かっている方角に何があるのかもヒヅキは知らないが、とりあえずこのまま真っ直ぐ進めば森に到達するだろう。

 遠目にも広そうな森からは、妙な感覚はあるが嫌な感じはしない。その先に山があるが、目的地までの日数を思い出す限りまだまだ先だろう。

 移動しながらの話し合いは、直ぐに女性の示した場所に向かうという事で決定した。女性の予想通り、英雄達は早く神と戦えればそれでいいようだ。

 ヒヅキは今のまま神と戦うのは不安を感じてはいるが、かといって別案がある訳でもなかったので、その話し合いでは口を閉ざした。強くなりたいですと言ったところで、残念ながら代わりの目的にはならないだろう。

 そういう訳で、現在は神の住まう地へと続く道を探して移動しているのだが、ヒヅキは視界の端で後方の英雄達を捉える。

 話し合いは直ぐに終わったが、まだ隊列については変更はなかった。どうもまだ英雄達の中には肉体に慣れていない者もそれなりに居るようで、そこまで急いでいる訳でもない移動でも、置いていきそうになる時があった。

 悪化しているのか少し体調を崩す者も居るらしく、想定していた以上にかなり移動が遅い。女性もそんな英雄達に呆れたようにするも、移動自体は速度を緩めても止まる事はしなかった。

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