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英雄達75

 神殿を後にした後、転移で階段に戻る。蘇らせた英雄達はそれなりの数が居るので、元々それほど広くはなかった階段が、今ではかなり狭く感じる。何だったら、階段から落ちてしまう英雄が出てきそうなほどの狭さだ。

 女性を先頭に、ヒヅキ達はぞろぞろと階段を下りていく。といっても、ここの階段は場所によっては下の階段に飛び降りて移動する必要があるので、階段に手すりや柵といった類の物などは無い。なので、帰りもわざわざ順路通りに帰らずとも、次々と階段を飛び降りて下っていけば済む。それに関しては何も仕掛けは施されていなかった。

「こうやって戻るのも認められていたようですからね」

 そう女性が言葉にする。行きに関しては色々と仕掛けが施されているようだが、帰りはあまり警戒していないらしい。

 英雄達も身体能力が高いので、ポンポンと階段を飛び降りていく女性に問題なく付いていく。それでいてしっかりと秩序があるので、見ていて危なげがない。

(相変わらずほとんど音がしないな)

 トンと自身が着地した際に鳴った小さな音を耳にして、ヒヅキは英雄達が集団で飛び降りても、自分よりも静かだなと改めて思った。女性に関しては、音どころか飛んでいるのではないかと思うほどにふわりと下りていく。

 そうして階段を下りていったので、上るのに時間が掛かったと思っていた階段も直ぐに終わる。そのあまりにの呆気なさに、階段終わりの扉を出たヒヅキは僅かに苦笑を浮かべてしまった。

 その扉も、帰りは何故だか転移魔法陣が扉の前に展開されていて、あっさりと向こう側に戻ってこれた。おそらく何らかの条件を満たせばそうなるのだろう。

 それから空洞内の神殿を出て、居住空間に戻る。帰りは実に簡単だなと、居住空間を歩きながら、ヒヅキは何だか納得いかないような気分になった。

 居住空間でも何事も起きる事無く外に出る。これから龍の巣に向かうが、この人数では流石に見つかるのではないか。そうヒヅキは思うも、それならそれで龍の巣を壊滅させればいいかと思い直す。ここに居るのは万夫不当の英傑達だ、ヒヅキでも殲滅可能な龍の群れなど誰か一人でも十分なぐらいだろう。

 であれば、見つからずに通過するぐらいは簡単なのかもしれないとも思い、ヒヅキはほとんど音を立てない英雄達の方にちらと視線を向けた。

 それからしばらく階段を下りると、龍の巣の手前までやって来る。女性は英雄達に事前に説明をしていたのか、何も言わずに歩いていく。

 立ち止まることなく階段から龍の巣に出た女性は、行きに通った道を粛々と進む。

 ヒヅキもその後に進みつつ、後ろの様子も窺う。

 英雄達も何も言わずに付いてきていたが、やはり何の音もしない。においについては魔法道具の影響で分からないが、おそらくしないのだろう。

「……………………」

 と、そこまで考えたところで、ヒヅキはふと思い出した。そういえば、寒さ対策に魔法道具を起動しっぱなしだったなと。

 その魔法道具は騒音対策にもなるので、言葉以外ではよほど大きな音でない限りは聞こえないのであった。なので、足音のような小さな音はほぼ聞こえないといってもいい。もっとも、この辺りは流す魔力量を調節することで効力を調節する事が出来る。そして、現在ヒヅキは完全とは言わないまでも、それなりに大きな音は遮断出来る程度の威力で魔法を起動していた。

 それに気づいたヒヅキは、密かに恥ずかしくなったものの、全ては自分の中で完結していた疑問だったので、誰かに知られるような事態にはならなかった。

 程なくして全員が龍の巣を通過し終えて、その先の階段を下りていく。結局、龍に見つかるような者は誰一人として存在しなかった。

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