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英雄達59

 とはいえだ。死を感じるほどの激痛を耐え抜いた報酬が魔法が普通に使えるようになるだけというのもどうなのだろうか。確かにヒヅキは魔法に憧れにも似た感情を持ってはいるが、それにしてもその過程が苛酷すぎる。

 だが、英雄達を取り出すということに何かしらの意味を持たせるのであれば、それぐらいしかないだろう。神に抱いていた敵愾心も今では疑わしく思うのだから。

 ――では、これを続けるのか。

 英雄達を取り出す作業が始まってどれぐらいの時間が経過したのか分からない。ほんの少ししか経過していないのか、かなり経過したのか。少なくともまだ痛みは続いているので、作業自体は続いているのだろう。

 後どれぐらいで終わるのか。それさえ分かれば耐えようもあるだろう。しかし、終わりが見えないというのは不安と苦痛を増幅させる。

 外に出られるかどうかは分からないが、光の膜から外に出れば強制的に終わらせることは出来る。そうすれば、この痛みもこれ以上感じずに済むだろう。

 しかし、それで本当にいいのか。ヒヅキの頭の冷静な部分が疑問を投げかける。

 光の膜から外に出れば、装置の範囲外という事で現在感じている痛みは取り除かれるだろう。しかし、それでは英雄達を取り出す作業が中断されてしまうし、その後に再開出来るとは限らない。

 仮に出来たとしても、作業途中で強制的に中断させられた場合、その作業は問題なく中断しているのだろうか。何か影響があった場合、それがヒヅキ自身に及ばないと言えるのだろうか。

 そういった疑問が次々に浮かんでいくも、何ひとつとして答えられない。そもそも英雄達を取り出すという作業自体よく分かっていないのだ、それについて疑問があっても解りようがないだろう。

 かといって、光の膜の中に留まり英雄達を取り出す作業を引き続き行うとすれば、激痛をこのまま耐え続けなければならない。その代り、英雄達を取り出す作業は順調に進む可能性が高いので、その後はヒヅキも魔法を使えるようになっていると思われる。

 では光の膜から出た場合だが、その場合は激痛から解放される代わりに、不測の事態に陥る可能性が高くなる。その中には、ヒヅキの命も含まれているだろう。生きていても何らかの障害を負う事になる可能性もあるので、相応の覚悟が必要だった。

 もっとも、激痛に耐えるにも覚悟は要るし、あまりにも痛みが強いので、何かしら後遺症が残りそうで心配ではあるが。何にせよ、どちらも大変な選択であるのには変わりはない。

(せめて英雄達の強さがどれぐらいか分かればな……)

 気を抜けば意識を手放しそうな中で、ヒヅキはそう思う。取り出しにかかる時間も知りたいが、そちらもまた知りたかった。

(このまま気を失ってしまいたいが、何だかそれも危険な気もするし)

 選択する為の指標を探しながら、勘とでも言えばいいのか、何かが警鐘を鳴らしているような感覚をなんとなく抱く。そんな気がする程度なので、それは気のせいかもしれないが。

 だが、考えてみれば現在は得体のしれない状況なのだ、意識を手放すのは危うく感じている。

(あの女性に悪意はなかったと思うが……まぁ、その場合は俺の見る目が無かったというだけだな)

 女性はヒヅキをこの状況に送り込んだ相手ではあるが、事前にかなりの痛みを伴う事は警告されていたので、ヒヅキを罠に嵌めたという訳ではないだろう。それでも何があるか分からないので、やはり意識を手放すのは極力避けたいところだった。

 意識を手放さないようにそんな事を思いながら、どうしようかと思案する。

 ヒヅキ自身、痛みで思考が鈍っているのが分かるも、それでも思考している内は何とか意識は保てているので、そのまま思案を続ける。

 とりあえずは光の膜に留まるのか、出ていくのか。まずはそれについて決めねばなるまい。

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