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英雄達51

「あれは今の神で合っていますか?」

 ヒヅキは笑みを浮かべたまま黙って女性と対峙している相手に視線を向けると、女性にそう尋ねる。

 前を向いているので、後ろに居るヒヅキのその視線を確認出来なくとも、ヒヅキと女性以外にはこの部屋には一人しか居ないので、ヒヅキが誰の事を言っているのかは問題なく伝わった。

「合っていますよ。と言いましても、本体という訳ではありませんが」

「そうなのですか?」

「ええ。あれは力を蓄えすぎたので、この世界には存在出来ないのです。それでもこの世界に入ろうとすると、この世界が崩壊してしまいますから」

「なるほど」

 頷いたヒヅキは、やはり力を増す方法を会得しているのだろうかと思いながら、神かどうかの確認を終えたので、先程思いついた考えを女性に述べる。

「でしたら、神自身にその事を尋ねてみてはどうでしょうか」

「尋ねる? 何をですか?」

 ヒヅキの言葉を聞いて、女性はどういう意味かと考えるように僅かに首を傾げた。

「力を増す方法を持っているのであれば、その方法を。また、どうやってそれを獲得したのかについてです」

「……なるほど。確かに最もよく理解している相手ではありますが、それを素直に教えてくれるとは限りませんよ?」

 神を全く信用していない女性は、そんな事を訊くだけ時間の無駄だと思っているのか、少し呆れたようにそう問い掛ける。神の性格を思えば答えてくれる可能性もあるが、最大の弱点にもなりえるだけに、その可能性はあまり高くないように思えた。それぐらいには両者の差は開いていない。

 もっとも、絶望的な差ではなく圧倒的な差という違いでしかないが。

 それでもまだ逆転の可能性が存在している以上、教えてくれるとは思えなかった。何より今代の神は享楽家ではあるが、好むのは足掻いた後の絶望である。その為には相手に勝てそうだと思わせた後、自身で考えさせて行動させて、本当は希望などなかったと教えるのを好むのである。

 その為には間に越えられない絶対の差が必要になってくるが、神と女性ではそこまでの差が無い以上、そこに希望を見せれば本当に希望になりかねない。それでは神の好みに合致しないだろう。

(まぁ、破滅願望も持ち合わせてはいるようですが)

 そう思いつつも、神の別の一面を思い出した女性は、ヒヅキの提言を絶対に無駄だとも言えなかった。

「それならそれで構いませんよ。とりあえずせっかくの機会ですから、訊くだけ訊いてみようかと」

 神と直接対峙する。それも険悪な感じではなく、比較的穏やかな雰囲気の中でとなると、今後あるかどうかわからないだろう。であればこそ、今が質問をする唯一の瞬間である可能性もあった。

「そうですか。であればヒヅキの好きなようにすればいいかと」

 女性としても特に止める理由も無いので、ヒヅキが質問したいというのであれば見守るだけ。

「ありがとうございます」

 許可が出たところで、ヒヅキは女性の隣まで移動して、神へと質問を始める。

「初めまして、でいいのでしょうか?」

「そうだね、こうして話をするのは初めてだね」

「早速ですが、訊きたい事があるのですがいいですか?」

「答えられる事には答えよう」

「ありがとうございます。ではお聞きしますが、貴方は前の神を倒して神に成ったと聞きました。前の神を一体どうやって倒したのでしょうか? 神である以上、強かったと思うのですが」

「ちゃんと正面から叩き潰したさ。見ものだったよ、驕り高ぶっていた者が現実を知った時の表情は。認めたくないけど認めなくてはならないというあの表情は、思い出しても過去最高にいい顔だったね」

 何かを思い出して、神はふふふと怪しい笑いを零す。しかし、ヒヅキが聞きたかったのはそこではないので、続けて質問する事にした。

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