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英雄達46

 今代の神が部屋の中に居る。女性が告げたそれは、なんとも衝撃的な話であった。なにせ、ヒヅキ的には神は最大の敵であるのだから。

 それに今回ここに来たのも、その神との戦いで戦力が心細いので戦力を補強しておこうという思惑があって、という部分が大きい。ヒヅキの問題はあくまでついでだ。

 であるのに、その補強を終えるどころか始める前に神と遭遇しそうだというのは、予想外であった。

「英雄を外に出すのを警戒して、という事ですかね?」

 ヒヅキはとりあえず真っ先に考えつく理由を口にしてみる。神はこちらの動向を監視出来る存在でもあるので、可能性としては十分考えられる事だろう。

「うーん……多分違うと思いますよ」

 しかし、女性は考えた末にヒヅキのその考えを否定する。

「何故です?」

「そもそも、ヒヅキの中の英雄程度であればそこまで警戒する必要はないだろうというのもありますが、それ以上に、戦力が充実した方が今代の神としては嬉しいだろうというのが大きいですね。戦力が揃えば、万が一ぐらいは存在しますから」

「なるほど」

 それはとても納得が出来る回答であった。刹那主義で快楽主義的な性格の持ち主である今代の神にとっては、相手が強大になればなるほど楽しめると考えるだろう。

 であればこそ、その為の装置が在るという部屋で神が待っているという現在の行動が理解出来なかった。

「では、何故部屋の中に?」

 ヒヅキはその疑問を女性に問い掛けてみるも、女性も分からないようで、少し考えた後に首を横に振った。

「まぁ、ここで考えていてもしょうがないので、その疑問は直接本人に尋ねてみましょう。相手もこちらが入ってくるのを待っているようですし」

 流石に神と呼ばれるだけあり、ヒヅキ達が部屋の前に到着しているのは把握しているようだ。そのうえで待っているというのは何かしら意味があるのだろうか。

 そんな事を考えつつも、ヒヅキは「そうですね」 と頷いて女性に同意する。それを確認した女性は、部屋の扉に手を掛けた。

 階層の中で最も大きな部屋だけあり、その扉も十分に大きな扉ではあるのだが、女性が手で触れた瞬間、その扉はひとりでに開いていく。今回はちゃんと見た目通りに両開きのようで、こちらを誘うように内側にその門扉を開いていく。

 門が開かれると、室内の様子が目に映る。

 室内は明るく広い。それでいて何も無かった。英雄達をヒヅキの中から取り出す装置が在ると言っていたが、それだと思われる物は何も見当たらない。

 その代りという訳ではないが、入り口から少し離れた場所に小柄な人物の姿があった。

(あれが今代の神?)

 他には誰の姿も無いので、おそらくその予想は合っているのだろう。

 耳まで隠れるほどに伸ばした灰色にも見えるくすんだ銀髪を奇麗に揃えた、少年とも少女ともつかない中性的な顔だちの人物。

 身なりは簡素ながらも明らかに上質な生地と分かる物が使われている服を身に纏っており、首から上以外に露出は無い。手も皮の手袋のようなものをしていて隠されている。

 背丈は10に届くかどうかといった人間の子どもぐらいで、とても低い。しかし、纏う雰囲気は老成した者かと思うほどに落ち着いていた。

「やぁ。待っていたよ」

 女性とヒヅキが室内に入ると、その人物が歓迎の声を上げる。その声音は、男とも女ともつかない優しげなもの。しかし、幼そうでいながら非常に落ち着いた声音でもあった。

 それは見た目同様に年齢や性別を感じさせない声。それでいながら、それを疑問に思わない何かを感じさせる。

(この感じは……)

 その僅かな違和感に、ヒヅキは目が醒めたような感覚になり、急いでその違和感ついて思考を行い、自身の記憶を漁っていく。

「へぇ……中々成長しているじゃないか」

 そんなヒヅキの変化に気がついたのか、その者は興味深げな声を出す。その際に一瞬垣間見せた目には、喜悦が滲んでいるように思えた。

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