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英雄達39

 通路の終わりは、とても広大な空間であった。しかし、そこには椅子ひとつなく、奥に小さな祭壇と扉がひとつあるだけ。

 村ぐらいはすっぱりと収まりそうだというのに、どれだけ見回してみてもそれ以外には柱ぐらいしか確認出来ない。

 何の飾り気も無い岩の壁が寂しさをことさらに助長しているような気にもなってくる。

 ヒヅキがそんな事を考えている間も、女性は止まることなく奥へと進んでいく。

 その後に続いて奥まで移動すると、扉と祭壇の全容が確認出来るまでになった。

「大きいな」

 近くで見ると、扉も祭壇もかなり大きかった。広い部屋の反対側から見て確認出来るぐらいなのだから、当然といえば当然かもしれないが。

 祭壇は家ぐらいの大きさがあり、近くで見れば絵が描かれている。ここの施設を思えば、それは宗教画なのかもしれない。

 詳しくは解らないが、確認出来た部分には少し前に見た龍のような姿が描かれていた。その正面に甲冑姿の騎士のような出で立ちの者が立ち、龍に向けて槍のような武器を構えている。その騎士の背後には、何やら神々しい感じの何かが描かれている。

 それを見たヒヅキだが、それに大して興味も湧かなかったので、扉の方に視線を向けた。

 扉の方は何処かの城門のように大きく、ここに来る前に見た扉と違って装飾の類いは一切見られない。何処までも武骨なその扉は、来るものを全て拒絶しているかのようにも思えてくる。

 そんな扉の前へと移動した女性は、扉を観察するように視線を這わせる。それは見た目は確かに扉なのだが、開けるような場所が見受けられないのだ。

 かといって、それが壁に描かれた絵という訳でもなく、確かにそこに嵌め込まれているというのが分かる。

 しばらく扉へと視線を向けていた女性は、1度何かを考えるように視線を切った後、再度扉に顔を向ける。そして、ヒヅキの聞いたことのない言葉らしきものを述べた。

 そうすると、扉が一瞬にして消滅する。まるではじめからそこには何も無かったかのように消滅した扉の奥には、大きな階段が姿を現す。

「……今のは?」

 一瞬で消えた扉にヒヅキが唖然としながら女性問い掛けるが、女性はそれには答えずに早く先へ進むように促してくる。

 それに従いヒヅキが女性と共に扉の奥に入ると、その直後に背後に扉が再度現れた。

「間に合いましたね」

 それを確認した女性は、ヒヅキが無事に扉を通過出来た事に安堵する。

「えっと、これは?」

 いまいち状況が掴めていないヒヅキは、困惑しながらも安堵している女性に問い掛ける。

「その扉は特定の言葉で開く仕組みになっていたようで、開くと言いましても転移魔法で扉が一時的に移動するだけですが」

「ああ、転移魔法だったのですか」

 その説明で、ヒヅキは扉が一瞬で消滅した理由を理解した。それと共に、何だか随分と転移魔法が身近になったものだと変に感心してしまう。一応ヒヅキの常識では、今でも転移魔法は伝説級の魔法なのだが。

「ええ、そうです。しかし、その転移魔法には対象が転移している時間が予め決められておりまして、それを過ぎると戻ってきてしまうのです。1度戻ってきますと、再度魔法を発動させるためには1日の猶予が必要でして」

「なるほど。それで急いでいたのですね」

「ええ。ただ、その転移魔法であの扉の下敷きになる事はありませんが」

「そうなのですか?」

「転移の時間が来る前にはその場に不可視の壁が出現しまして、そうなると侵入が不可能になります。また、その時に扉が出現予定の場所に何かが在ると、それは諸共扉の前に転移させられます。無論、それはこちら側にではなく向こう側にですが」

「なるほど。同じ転移魔法とはいえ、複数の魔法が組み込まれているのですね」

「ええ。当時でも中々に高度な方法でしたよ」

 説明を受けて、ヒヅキは扉を振り返り、観察するような目を向ける。しかしヒヅキでは、それにどんな魔法が組み込まれているのかまでは解らなかった。

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