表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1104/1509

英雄達37

 それからも何かを思い出そうとするような仕草をみせていた女性だが、しばらくするとそれもなくなる。

 そのまま通路を進むと、奥の方に大きな扉が見えてくる。それは繊細な細工をこれでもかと全体に施された荘厳な扉。

 見るからにこの先に何かありますよといった感じのそれは、かなりの年月が経過しているだろうに奇麗なままだった。

「あの扉は随分と奇麗ですね」

 パッと見た感じ、汚れひとつ見当たらないその扉は、まるで取り付けられたばかりのようにも思えたが、奇麗なのは扉だけのようで、扉の前に置かれていた置物は風化して崩れており、元がなんだったのか分からない。

 それがまた扉の異様さを引き立てているようで、どうしてもそちらに視線が向いてしまう。

「この明かりを触媒にして劣化をかなり和らげているようですね」

「へぇ、そんな方法が」

「ですので、この明かりがある内は簡単には朽ちないでしょう」

 扉について話を聞いている内に、その扉にの前に到着する。近くで見る扉は非常に大きく、威圧的であった。

 ヒヅキは大きなその扉を見上げて、これをどうやって開けるのだろうかと疑問に思う。どう見ても人力で開けるような代物ではないだろう。見た限り、別に出入り口が用意されているという様子もないので、何処かに開閉装置でも在るのかもしれない。

 そう思って扉の周辺に視線を巡らせてみるも、特に何があるというものでもなかった。在っても朽ちた置物ぐらいか。

 ではどうするのだろうかと思い、ヒヅキは扉に触れてみる。ひんやりとした感じが心地いいも、それだけだ。金属らしい冷たさだと言えばそれまで。

 よく分からないので女性の方に目を向けてみると、女性は扉と周囲の壁との境目辺りに立って、その境目辺りを見詰めていた。

 何をしているのだろうかとヒヅキは疑問に思うも、もしかしたらそこに扉を開く何かが在るのだろうかと思い、近寄ってみる。

 ヒヅキが近寄ると、それを確認した女性は手を伸ばして、扉と壁の境目を指先で確かめるように撫でる。そうすると、何か重たい物が動いたかのような小さな揺れが、足の裏を通してヒヅキに伝わってきた。

 それに少し身構えて周囲を見回してみるも、変化らしい変化は見られない。なので気のせいだったかと思いはしたが、そんな訳はないよなと思い直す。女性が何かしたのは間違いないのだから。

 しかし、だからといって何も変化がないのだから分かりようもない。扉は依然として閉じたままであるし、周囲の様子にも変化はない気がする。

 念の為に床や天井も確認してみたが、最初に見た時から何も変わっていない。ここまでくると、やはり気のせいだったのかもしれない。

 そう疑問に思っている間に女性が立っている直ぐ近くまで寄ると、ヒヅキは女性の視線の先を確認してみる。そうすると、そこには何やら記号のような文字のような彫り物が刻まれている。

「それは?」

 両手で数えられる程度の数が並んでいるだけのそれを指差してヒヅキが女性に問うと、女性はもう1度その記号にも文字にも見える部分を指の先で撫でた。

「これは開閉方法について書かれているのですよ」

 そう言って女性が指を離すと、そこには先程までとは違う文字が刻まれていた。それと共に、先程と同じく小さく足の裏から地が震える感触が届いたので、やはり女性が何かしたのが原因らしい。

「先程までとは刻まれている模様が違いますね」

 先程開閉方法について書かれているのだと女性が言っていたので、そうやって撫でる事で説明の続きが読めるのかもしれない。そうは推察するが、実際のところは分からないので、ヒヅキは素直に問い掛けてみた。

「ええ。こうやって少しずつ読み解かせることで、簡単には開けられないようにしてあるのです。それに、ここに書かれている説明は、教義の一部を引用しているようなので、しっかりと勉強していないと分からないかもしれませんね」

「なるほど。今となってはかなり難しい説明ですね」

「そうですね」

 ヒヅキの言葉に小さく笑いながら、女性は開閉方法を読み進めていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ