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英雄達35

 そうして眺めたところでふと疑問が湧き、ヒヅキは女性に質問する。

「この方法だと、魔法を強制的に使わせることが出来るのですか?」

 魔法というのは、普通は自発的に行使するモノであって、誰かに強制的に行使させられるモノではない。しかし、目の前の干からびた死体は、女性の推測通りであれば、強制的に魔法を行使させられた可能性が高い。こんな場所に繋がれて閉じ込められた挙句、死の間際まで律儀に自発的に魔法を行使し続けていたとは、到底ヒヅキには思えなかったのだ。

 ただ、そう質問してみたはいいが、女性はこの方法について存在は知っているが方法までは知らないと明言していたので、答えに期待は出来なかった。

「おそらくそうなのでしょうね。その辺りはもう少し調べてみないことにはなんとも言えませんが……精神に干渉するなり認識辺りを変えるなりの、所謂洗脳の類いの可能性もありますね。もしくは、身体を乗っ取るか。何にせよ、まともな方法ではないでしょうね」

 思いの外しっかりとした答えにヒヅキは内心で驚きつつも、そんなところまで分かるものなのかと感心する。

「なるほど。それは調べれば分かるものなのですか?」

「分かりますよ。確実にとまでは言いませんが、この遺体を調べれば再現も出来るようになるでしょう。多少時間は掛かりますが」

「それは凄いですね」

 魔法の事はさっぱりなヒヅキでは、魔法道具を調べるのが精々であった。

「慣れ……いえ、これは知識の有無にでしょうね。ヒヅキならば知識があれば出来るようになると思いますよ。魔法の残滓を調べるには、魔力の操作がかなりの域で自在に扱えるようになっていなければなりませんが、ヒヅキはその辺り問題ないですし」

「そうなのですか?」

 以前にも言われた事ではあるが、その辺りは比較対象が居ないのでヒヅキにはあまり実感がなかった。ただ今回に限って言えば、それよりも何か高等な技術を要しそうな事を自分のような魔法に疎い者が出来るのだろうか、という疑念の方が強い。

「ええ。少し調べる時間を頂いてもいいですか?」

「どうぞ」

「ありがとうございます。ヒヅキも見ていれば、何となくは分かるかもしれませんよ」

「いいのですか?」

 何か秘匿すべき技術とかではないのかと考えたヒヅキが問うと、女性は小さく笑う。

「問題ありませんよ。このぐらいでしたら、おそらくこの世界でも伝わっている技術だと思いますし」

「そうですか。では、見学させていただきます」

「ええ、どうぞ」

 ヒヅキが頷いたのを確認した女性は、早速干からびた死体に目を向ける。

「まずは体内の様子からですね」

 説明するようにそう口にした女性は、干からびた死体に向けて手を伸ばした。





 女性による干からびた死体の調査は割とすぐに終わった。時間にして2時間か3時間といったところか。

 調査のやり方は、ヒヅキが魔法道具を調べる時と似ていたが、その細かさが異様であった。

 ヒヅキが魔法道具を調べる時もかなり繊細な作業ではあるのだが、女性が死体を調べる作業は、糸の先に五感を繋げて調べるような、そんな難しさ。ヒヅキが魔法道具を調べる際は感覚で何となく解る程度の作業なので、作業のやり方が分かっても、女性がやっている事は次元が違った。

 結果として参考になったにはなったが、同じ事が出来なさそうというのも分かった。それと同時に、どうして女性はそれを自分には出来ると思ったのかと、ヒヅキは疑問に思う。

 とはいえ折角教えてもらえたのだ、そういう方法がある。程度には留意しておこうとヒヅキは考えた。

 調べ物を終えたところで、二人は部屋を出る。

 部屋を出ると、女性は扉を閉めて再度鍵を掛けた。そのうえで封印を施していく。

「人前に触れるのは避けた方がいいですからね。かといって、遺体の処分は止めておいた方がいいでしょうし」

「何故ですか?」

 封印を終えて、扉も周囲の岩を引き延ばすようにして覆って隠してしまった女性がそう呟いたところで、ヒヅキはそれはどういう意味かと問い掛けた。

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