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英雄達33

 少し進んだところで、女性が術者が居ると言っていた場所に到着する。

 そこは通路に接する部屋で、扉が取り付けられている。それは居住区というだけあり、珍しくはない。実際、今までヒヅキ達が通ってきた通路でも、似たような金属で出来た扉は幾つも見掛けていた。

 しかし、そこの扉は見た目は他と変わりないのだが、よく見れば他の扉同様に取っ手付近に鍵穴がある以外にも、地面ギリギリと天井付近の2ヵ所にも鍵穴が確認出来る。

 慎重に調べてから扉に触れてみると、見た目にそぐわないかなりの重厚さが感じられた。おそらく他の扉とは見た目以外材料からして異なっているのだろう。

「………………ここまで近づいてようやく分かりましたが、この部屋の壁部分だけ補強されていますか?」

「ええ。物理的にも魔法的にも補強されていますね」

「それはやはり、中に術者が居るからですか?」

「そうですね。ここだとこの明かりは結界の役割も担ってますし、なによりこれは秘匿されている術理ですからね。本来であれば、おそらく扉すら取り付ける気はなかったと思いますよ」

「なるほど。確かに、ここに扉が無ければ早々気がつくものではありませんね」

「ええ。そういう事です。それだけ秘密という訳ですね」

「ふむ。この明かりの魔法は確かに凄いとは思いますが、そこまでして秘匿するべきモノなのでしょうか?」

 女性の説明を聞く限り、この魔法は光源を設置しなくとも明るいというだけの魔法で、夜狼だとか影狼だとか特定の生物以外にはそれほど効果があるとも思えなかった。確かに侵入者にはある程度は効果がありそうではあるが。

 ヒヅキがそう疑問を抱いて女性に尋ねると、女性は鍵穴に何かをしながら口を開く。

「そちらもありますが、もっとも秘匿すべきは、死後も術を発動し続けられるという方ですね。それは厳重に秘匿するだけの価値が在る方法ですから」

「…………なるほど。そう言われてみれば確かにそうですね」

 死後も魔法を発動し続けられるというのは、ここのように結界なり明かりなりを維持し続けられるという事である。直ぐに思いつくだけでも十分に有用な方法だが、活用する者によってはもっと効果的な使い方もあるのだろう。だがその場合、人は魔法道具と同じような扱いに成り下がるのだろう。

 それを思ってかどうかは分からないが、ヒヅキは秘匿するという判断は間違っていないような気がした。

「まぁ、あまり強力な魔法は長く維持出来ないようですがね。それでも価値は十分あるでしょう。事防衛に関しては設置出来る分だけかなり有用ですし。結界だって、結界を発動させた術者を街の四方にでも隠してしまえば、安上がりで中々に強力な結界が維持出来るでしょう。魔力量の多い人物というのは探すのに少し苦労しそうですが、魔族辺りは総じて魔力量が多いですし。簡単な方法であれば、そこらの浮浪者を使うという手もある。魔力は誰にでもありますからね。世の中には強制的にその魔力を引き出して術の行使を行う。なんて邪法の類いも存在していますから」

 鍵穴を全て確かめた女性は、そのまま何事もなく扉を開く。どうやら鍵穴を調べながら解錠していたらしい。

 開かれた扉の先は、真っ暗だった。

「ここは暗いですね」

「ここに明かりは必要ありませんからね」

 ヒヅキの言葉に女性はやや硬質な声音で言葉を返すと、室内に1歩踏み出し、中の様子を窺うように首を巡らす。

 それに釣られるように横から顔を出したヒヅキは、真っ暗な室内へと目を凝らして確認する。

「……明かりを出してもいいですか?」

「どうぞ」

 少しして、このままでは全容の把握は難しいと判断したヒヅキは、女性に確認を取ってから光球を現出させた。

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