表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1095/1509

英雄達28

 ヒヅキは改めて腕輪に組み込まれた魔法が効果を発揮しているのを確かめると、思いつきながらも折角だからと、女性に魔法や魔法陣に関して色々と教えてもらえないかと頼んでみる。それを了承した女性から色々と教わりながら、ヒヅキは龍の巣を目指す。

 それから階段の終わりが見えてきたところで、両側の壁も頂上が見えてきた。その壁の上が確認出来るまで階段を上ると、1度立ち止まって龍の巣の様子を覗いてみる。

「あれが龍ですか。近くで見るとやはり大きいですね」

 壁の上は平地になっており、そこには大小様々な龍の姿が確認出来た。大きさは、小さい龍でも人間の大人よりも大きく、大きい龍に至っては、横に家を並べれば家が犬小屋にでも見えてくるだろう。

 そんな龍が、パッと見ただけで数10ほどは確認出来る。それを見て、ああここは確かに龍の巣だとヒヅキは納得した。

 近くで見る龍は、鍾乳石のようなツルツルした感じの波打つ肌をしており、色は暗い赤色。ただ、小さい龍に関しては黄色寄りの赤色で、肌は魚のような感じであった。

 太く大きな2本の足で立ち、身の丈以上の翼を折りたたむようにして背に収めている。手は足と違って細く長い。それでも太さは人間の胴体の数倍はありそうだが。

 龍が大きすぎて顔はあまりはっきりとは確認出来ないが、爬虫類と魚類を混ぜたように見える。

 その身に纏う魔力は、流石は神に抗えるというだけあり膨大。しかし、おそらく女性よりはそれでも少ないと思われた。

 翼をはためかせる音や龍の声は遮断されているのでヒヅキの耳には届かない。それでも大きな振動が足を伝って感じられる。それが重そうな龍が歩く振動なのか、音の大きさ故かは不明だが。

「それで、どうするのですか?」

 龍に視線がいっていたヒヅキだが、よくよく周囲を観察してみると、奥の方に先へと進む階段があるのが僅かに見えた。

「ここを突っ切りますよ。どうやるかはヒヅキ次第ですね」

「と、言いますと?」

「隠れながら次の階段を目指すのか、それとも龍をなぎ倒しながら進むのか、ですね」

「それは隠れてでいいと思うのですが……」

 とてもまじめな顔で問われたヒヅキは、なんとも言えない顔でそう返す。龍をなぎ倒すのは女性にとっては容易いだろうが、ヒヅキでは不可能とは言わないまでも、それでもかなり大変だろう。

「そうですか。では、行きましょう。龍はあんな見た目で鼻がいいので気をつけてくださいね。まぁ、その魔法を発動しているので大丈夫でしょうが」

 そう言うと、女性はさっさと歩き出す。それに続いてヒヅキも気配を消しながら移動する。

 ヒヅキの前を歩く女性は気配を消すのがよほど巧いのか、しっかりとその姿を捉えていないと、直ぐ近くに居るというのに見失いそうになってしまう。

 龍の方はヒヅキ達に気づいた様子は無い。大きい方はまだしも、小さい方は背丈的に視界の中に入りそうで、ヒヅキは少し緊張する。

 しかしそれは杞憂だったようで、大分移動したが結局見つかる事なく奥の階段に到着する。

「龍に気づかれないとは、流石ですね」

 無事に階段に到着したところで、やや驚いたようにも思える声音で女性がヒヅキに声を掛けた。

「龍はそんなに察知能力が高いのですか?」

 女性の言葉に、ヒヅキは龍の方に目を向けて問い掛ける。そこには、未だにヒヅキ達が居る事に気がついていない龍達の姿がある。

「ええ、かなり。それこそ遥か昔には、龍に気取られずに前を通る事が出来れば一流。と言われていた事もあったほどですから」

「そうなんですね」

 何のとは思ったが、冒険者とか狩人とかその辺りの話なのだろう。つまりは、龍などと対峙する可能性が在る専門職でもそれぐらい賞賛されるべき事だったらしい。

 昔の技量がどの程度のものかは分からないが、今までの話から、おそらく現在よりも上だったことだろう。

 そう予想すると、女性の今更なその発言に、ヒヅキはもう少し早く伝えてくれてもよかったのにと、少し思ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ